久里浜だより24

■先週からあっという間に火曜日の夜になってしまいました。土曜日はレポート書き、日曜日はピアノの演奏会、昨日月曜日は町田市への研修、そして今日火曜日は2コマの講義でした。
■ピアノの演奏会は映画『シャイン』のモデルとなったデビッド・ヘルフゴット本人の演奏をきくことができました。場所は渋谷・文化村のオーチャード・ホールです。
■デビッド・ヘルフゴットは駆け足でステージに登場。膝を折って何度も何度も嬉しそうに客席を見ました。プログラムです。
ショパン/『雨だれ』『ノクターン変ホ長調』『幻想即興曲』
ラヴェル/『道化師の朝の歌』
ドビュッシー/『亜麻色の髪の乙女』『月の光』
ミリー・バラキレフ/『イスメライ』
リスト/ピアノソナタ ロ短調
■『雨だれ』のなんときれいな音か。限りなく静かで透明感があって、ひとつひとつの音がていねいにていねいに紡がれていきます。戦慄が走り、全身の感覚が彼のピアノに集中します。
■ピアノを弾きながら、彼は絶えず何かしゃべり続けます。片手が休みのときは大きく腕を動かしてまるで指揮をしているかのようです。グレン・グールドと似ている。でも、デビッド・ヘルフゴットは客席に顔を何度も何度も向けながら「どう?、そうだろ、そうなんだよ、そしてこうなんだよ」と言っているかのように口も動かせてピアノを引き続けます。すべてのコンサート活動をやめてレコーディング・スタジオでピアノを引き続けたグールドとそこがちがいます。
■ショパンの前奏曲もノクターンも即興曲も、みんなテンポを自在に揺らして、強弱のつけ方も好きなようにして、でもそれが何の不自然さもないのです。すてきでした。よーくきくと、あれ?…ここはこんな和音じゃなかったはずだよ、ここの装飾音のつけ方がちがう、など、音までも変えてしまっているのですけどごく自然に流れる。音楽が彼の表現そのものなんだと思いました。
■彼の病理はくわしくは知りません。1997年5月4日の中日新聞の『中日春秋』には「精神を病んで入院生活をしたことがある」とあります。彼は今も常動行動があり、精神状態は完全には治っていないのでしょう。音楽が彼の支えの1つになっているのだと思います。http://www.chunichi.co.jp/news2/chu/shunju/9705/970504sj.htm
■翌19日月曜日は、町田市のすみれ会館で音楽療法のセッションをいくつか見せていただきました。すみれ会館は就学前の発達が気がかりな子どもたちの療育を進めています。
■午前中は肢体不自由と知的の重度重複の子どもたちのセッションでした。直径5センチくらいの小さなシンバル型の鐘をやっと動く手でチリンと鳴らしてすごく嬉しそうな笑顔を見せてくれた子、音楽療法士の歌いかけでタンバリンに手を伸ばす子、音楽の力はなんと大きいのだろうとあらためて思いました。療法士の方は特別なことはしませんでした。歌いかけて、待って、子どもからの働きかけを受けてまた笑顔と歌で語りかける…。保育士も子どもの動きを必要最小限支援するだけでした。防音設備が施された静かな部屋で子どもと療法士の対話が続きました。
■子どもがたたく太鼓や体の動きに、療法士がピアノを即興で弾いてやりとりをするセッションもあるとのことです。午後のダウン症の子どもたちのグループ・セッションのリトミックで、そんなやりとりの片鱗を見せてくれました。ピアノの弾き方一つで子どもと豊かなやりとりができるものです。でもピアノを弾く技術以前に療法士の方が子どものことをよくわかっていて音楽の楽しさを共有していることを強く感じました。
■今日20日火曜日は実践女子大教授の中根晃先生の『自閉症の病理』と植草学園短期大学講師の名古屋恒彦先生の『生活単元学習の指導』でした。
■『自閉症の病理』の中根晃先生は医学博士です。医学博士ならではの緻密な医学的分析と教育プログラムの有効性がどう結びつくのか、という未知の部分について先生ご自身の推論を加えるという、私の頭ではちょっと理解し難いところもありました。カオス理論をご存知ですか? 「カオス」「ゆらぎ」「ノイズ」…うーん、勉強しないとわからない。
■午後の『生活単元学習の指導』は学習指導要領の呪縛?から離れたところで、生活中心主義とイデオロギーっぽく言ってしまうと誤解があるかも知れませんが、子どもの生活を大事にするという点でたいへん共感するところがありました。
■今日の講義はくわしい資料がありません。ノートは49ページ取りましたが書いた本人さえも解読困難!
■ところで水越けいこさんをご存知ですか? ♪ほほにキスして そしてさよなら 今度会う時は笑顔で…と歌ってヒットした歌手です。20年前のことです。デビュー前は朝の天気番組のレギュラーで、私はこの頃から知っていてファンでした。彼女の子どもがダウン症で、夫が家を出て行き、車を売って生活費にするような日々もあったとのことです。朝日新聞東京版6月19日(日)で大きく取り上げられていて初めて知りました。今彼女は「コンサートを開いたり、インターネットを通してアルバムを発売したり、徐々にだが活動の場が広がってきた」(朝日新聞)とのことです。検索エンジンで「水越けいこ」でサーチすると100件以上ヒットします。よかったら一度アクセスしてみてください。

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