日別アーカイブ: 2000-06-05

久里浜だより17

■3日土曜日に大宮の小串里子先生のご自宅に行ってきました。1時から延々6時間半、夜の7時半過ぎまでたくさんのお話を伺い、夕食までご馳走になってしまいました。なので私は軽井沢に長野新幹線で行くことになりました。
■小串先生のお住まいは日本版ログハウスです。よくあるログハウスのように天井が高くてロフトがあります。でも法隆寺の五重塔などと同じ「田の字」工法で日本の杉材がふんだんに使われていてほっとする空間です。壁のウォーホールの作品などはみんなホンモノ! えっ!と小市民は電卓に並ぶ0の数を想像してしまった。
■小串先生は94歳のお母さんに経管栄養や吸引などの「医療的ケア」をしながら、食事の用意をしながら、表現についてたくさんの話をしてくださいました。夕食は、麦や玄米、ごぼうなどが入ったご飯にオリーブオイルをかけて焼いた鮭、そしていっぱいの野菜でした。薄味でとてもおいしかったです。
■またまたたくさんノートを取りましたが、今はキーワードだと思う言葉を並べることしかできません。でも、お伺いした研修員3人が求めるところだと思っています。音楽・美術・体育という「教科」は「表現教科」だということです。
■私がまとめたキーワードです。
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小串里子先生との話し合いから(2000.6.3 SAT)

・21世紀は個人の個性よりもコミュニケーションの中から何か出てくる。
・社会性をもった美術。
・造形遊びはやってみてそのおもしろさがわかる。大学生もおもしろい。
・行為が問題。結果は問題ではない。
・体動かして何かすること大事。
・集中、呼吸の安定。
・その子らしさが出ていることが大事。プロのアーティストはコンセプトを出すことに懸命。
・音楽→心が動く→体が動く→出てくるものでまた体が動く。
・体が動くと心が開放される。
・年をとっても創造的な人は60歳以上がいちばん創造的。自己表現は簡単じゃない。それをさがしてどこまでもやっていく。
・音楽の時間に先生の歌をきく、手遊び、リズム…心が開き、他の時間に落ち着く。
・楽しみのないコミュニケーションない。
・生き生きと楽しめて体を動かすことの意味、表現教科でバラバラで技法の順序性追わない。21世紀はこうなる。
・個性を強く出せばいいというのでない。今教育界で起こっている問題すべてコミュニケーションがうまくいってないことから。
・癒しへのエネルギー。
・心を開く表現体験。
・仮装じゃなく変身。
・総合表現学習。
・表現の拡大。
・表現しようという心、だれかが引き出す、自分で引き出す。
・動けば気持ちは開く。人を動かす。
・プレイセラピー、サイコセラピー。心の治療になる。
・音刺激大事。バラバラにするよりもまとめる方が心が開く。劣等感もたない。まちがいというものない。出てきたものから評価するもの探す。先生は評価できなければならない。「どういうふうにしたいのか」。失敗はない。
・偶然性から発見していくことの心のメカニズムが表現では大事。
・みんなでやるとコミュニケーションがある。
・美術、音楽教育は統合されていく。枠はない。子どものトータルな表現としてやっていく。
・コラボレーションの方向でいく。
・心を開く表現活動。
・五感を統合する。体育と美術、無関係ではない。
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※“collaboration”は「共同、協力、共同研究(制作)、共同研究などの成果、共同制作品、共著」という意味ですが、続く“collaborationist”には「《軽蔑的》(敵などへの)協力者」の意味があります。(小学館『 PROGRESSIVE英和中辞典』)
■前にも書きましたが小串先生は都内の養護学校でずっと勤務されて、「子どもの城」やNHKの「ストレッチマン」をプロデュースしてみえます。そのほか、ここNISEの短期研修の講師、武蔵野美術大学の講師、現代音楽の作曲家とのコラボレーションなどもされてきました。40年間一貫して「表現」行為の意義を追及、最近やっと「あなたのいうようになってきましたね」と言われるようになってきたとのことです。
■小串先生が具体的にどうやって授業を進めてみえたのか、それはまたの機会にします。小串先生の実践は本になっています。写真がたくさん入っていて3000円を越す値段となったので、小串先生が若い人たちが買えるようにと1冊あたり約1000円、350万円を負担することにされたとのことです。だから2200円という値段です。
■小串里子著『ワクのない表現教室~自己創出力の美術教育~』(フィルムアート社 2000.2.21 2200円)
・養護学校から美術大学まで…障害・年齢の枠を超えて
・美術教育の思索と27の事例集
■軽井沢では絵本美術館のブラティスラヴァ世界絵本原画展がとてもよかったです。『スイミー』の原画を見ることができました。1963年の作品なんですね。私が小学校に入学する前の年です。原画はどれも見る人の目を強く惹きつけます。目録を買ってきましたがそれを見ながら美術館で見た原画の肌触りのようなものを思い出しています。でも印刷されても絵本はやっぱりいいものです。
■軽井沢は寒かったです。夜12度の中を半袖で歩いた。翌日は晴れて浅間山がとてもきれいに見えましたが寒いのでまいりました。
■今日5日月曜日の講義は北九州市教育委員会主幹の野依啓多(のより…)先生が『養護学校における授業研究の実際』というテーマで、北九州市立八幡西養護学校の取り組みを中心に話をしていただきました。八幡西養護学校は肢体不自由と病弱の養護学校です。やはり重度の子どもたちばかりです。高等部と中学部のビデオを見ながら度会養護学校を思い出していました。ビデオは総合学習の「外に出かけて楽しもう」(高等部)と「かっこよくなろう」(中学部)のようすでした。「かっこよくなろう」では茶髪を選んだ生徒の髪をほんとに茶色に染めてしまうのだそうです。もちろん保護者には前以て総合学習のねらいを文書で説明し、単元に関わる1人1人の生徒の家庭でのようすについて保護者から情報を提供してもらって学習活動を計画します。くわしいくわしい資料があります。小学部は年間計画だけですが、小・中・高の3つの学部が縦の連携をもって計画しているものです。入用でしたら連絡してください。(平成8年度なので「総合的な学習」ではありません)
■明日はまたまた朝7時集合で南沢学園に実地研修です。明後日は自己研修で深谷市のさくらんぼ保育園でリトミックの研修です。明日の夜は深谷市に泊まることになります。さくらんぼ保育園では朝9時半から2時という長時間のプログラムで給食も食べます。なんと500円。1食500円の給食なのでどんなに豪華なのだろうと期待もしています。でも動きやすい服と着替えを用意してほしいとの連絡もあって、ひょっとしたら1日保育士をするのかも知れない。これは未体験だ!