月別アーカイブ: 2013年8月

音楽と本と

大須のオーディオ専門店で試聴の客の横で私も聴き比べをしていくつか発見がありました。まず、その試聴に使っていたCDの歌の素晴らしさでした。ピアノで静かに始まった曲は「翼をください」でした。いわゆる声楽家の声で歌う日本語の自然な発声感のその歌は心の中にすっと入って演奏のメッセージが手に取れるように伝わってきました。これはすごい。ただごとではないと思いました。誰が歌っているのだろうと、店員がCDプレーヤーを換えるときに見えたディスクのタイトルは「a prayer」の文字でした。その8番目が「翼をください」でした。ネットで調べると、海上自衛隊東京音楽隊と三宅由佳莉の「祈り〜未来への歌声」でした。この28日に発売されたばかりで、そういえば1週間ほど前にNHKのニュース番組で特集がありました。すぐにはそれとはわかりませんでしたが、今日、私の耳を魅了したのは紛れもなく三宅由佳莉の歌でした。帰宅してiTunes Storeでアルバムを購入しました。ピアノも海上自衛隊東京音楽隊の演奏もただものではありません。確かなアンサンブルの資質を備えたシンフォニックバンドはストイックなまでに美しいハーモニーを紡ぎ出す。この人たちは何者なのだろうと思いました。

聴き比べたCDプレーヤーは、50万円台と23万円台、18万円台の3台で、「50万円のものは買えなくてもそれに近いのはどれかということです」とのことでした。音のちがいは明らかで18万円台のものが選びどころでした。音、性能のちがいについて店員は「いいものは音楽がゆっくり聴こえます」と話していました。どうしてそういう表現になるのか、私なりに考えたのは、音のきめが細かくて緻密なので“音のグラデーション”をしっかり表現しているからというものです。驚いたのは、アンプはなんと3万円台だったということです。音の入り口がどれほど大事なのか、まさに目の当たりにしたわけです。スピーカーは12万円台の小さなブックシェルフでした。ピアノやフルオーケストラなどソースを換えて聴き比べたいものです。いい音は人を幸せにしてくれます。

大型書店では専門書フロアで福祉関係の書棚の前で本を手に取ってはいろいろと考えてしまい、相当な時間を費やしました。買い求めたのは『図解とQ&Aでスッキリ! 障害者総合支援法のしくみ』(三修社 2013)と『コミュニティケアの開拓 宅老所よりあいとNPO法人笑顔の実践に学ぶ』(浜崎裕子 雲母書房 2008)、『ピアノが私に翼をくれた 障害をもった「天使」たち』(近藤裕 アチーブメント出版 2009)の3冊です。今日、膨大な本の中から買い求めた1冊、『コミュニティケアの開拓』の著者が一級建築士であることは私の発想ともリンクしています。コンパクトシティを調べ始めたのは東北大震災の少し前でした。大震災の後、建築家の伊東豊雄が被災地につくったのは人がつながる「みんなの家」でした。近いうちに再びその書棚の前で考えたいことがたくさんある。

アンネローゼ・シュミットのモーツァルト

アンネローゼ・シュミットが弾くモーツァルトのピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466を初めて聴いたのは高校生の時で、オーケストラの冒頭から身体が凍り付いたような、そして、ピアノが入るとまさに戦慄を覚えたことは昨日のことのように思い出すことができます。アンネローゼ・シュミットのピアノは幾分か録音にもよるとは思いますが硬質な音で自在に鍵盤を駆け巡ってそれが揺るぎない構造感を演奏に与えているように思います。久しぶりに聴いてネットで検索するとモーツァルトのピアノ協奏曲集が入手できることがわかって早速注文しました。ドイツからの直送で2週間ほどかかるもののEU圏のBOXものはかつての1枚分で10枚ほどのお値段でクラシックファンには有り難い! 30年も40年も前の演奏がこんなにも生々しいほどの鮮度で聴こえるのはすばらしいとしか言いようがない。秋の夜長の音楽になります。

音楽の森

今朝、朝刊1面下の書籍の広告に『洛北岩倉と精神医療 精神病患者家族的看護の伝統の形成と消失』(世界思想社)を見つけて朝の眠気もどこかに飛んで行ってしまいました。京都岩倉の大雲寺を中心とする精神病患者の治療と滞在の歴史は障がいがある人の地域生活のあり方のひとつの姿を示していると思っています。しかし、資料が少なく、その全貌がよくわかりませんでした。広告によると「著者長年にわたる聞き取りと地元に残る史料により解明する」とあるので少なからず期待して取り寄せることにしました。

午後は休暇を取って奈良県の社会福祉法人を訪ねました。その帰りに「音楽の森」の看板を見つけて峠を2つ越えて行ってみるとそこには驚きの空間がありました。廃園の保育園の遊戯室を改装したホールにはグランドピアノと電子オルガンがあって、応対してくれた女性はせっかくだからと電子オルガンで「水戸黄門」のテーマ曲を聴かせてくれました。演奏はメッセージに富んだもので心が躍りました。話を聞くとそこはNPO法人音楽の森のホールで、毎週4日コンサートを開いているとのことでした。ロケーションは山奥といってもいい所で、どんなお客さんがどのくらい来るのだろう等々、疑問というよりそうした活動が継続されていること自体に惹かれている自分がありました。話を聞くとそのNPO法人の本部は奈良市にあり、著名な人たちも訪れていることや世界的な大企業の支援も得ていることがわかって、その小さなホールの文脈の確かさに頼もしさを感じました。大きな出会いでした。この次はコンサートの時刻に合わせて訪れたいと思っています。

マインドマップ事始め

今朝は夏の間スイッチを切っていた自宅の便座が冷たく感じられたのには驚きました。久しぶりのまとまった雨で地面の温度もしっかり下がったようです。近くの稲田では稲刈りが始まっています。

ここしばらくいきものがかりの「風が吹いている UK recorded version」をリピートして何回も聴いていました。フルオーケストラの編曲がすごく広がりがあっていい。不思議なことにこの曲を聴いているとスコア(オーケストラの総譜)が見えてくるように思えてきます。弦セクションはボウイングも見えるくらいに。言い換えればオーケストレーションの勉強にいいということか。

マインドマップはその名前の印象がよくなくて使ってこなかったのですが、まとめようにもその糸口がなかなか見つけられないことが出てきたので試しに使ってみることにしました。アプリはiPhoneとiPad mini、Mac、WindowsとそろっていてDropboxで同期されることやデザインを考慮してSimpleMindです。使ってみると自分が考えていることの不十分さがあらわになるなど思考ツールとしてよくできていると思っています。新しいことを始めるのは相当なエネルギーを要するものですが夢中になってしまう面白さもあります。しばらく頭をひねりひねりして何が出てくるか! 昨夜、後押しされるような夢を見たので急げ!です。

東京

いつの間にか8月も下旬に入って稲穂も黄色く色づき始めました。空は高く青く澄んで暑さは厳しいものの秋が近いことを感じさせます。

先週末は東京で自転車に乗るという“夢”が叶いました。持って行った自転車は車のスペースの関係でKHSのフォールディングタイプとなり、これはロードバイク並のスピードで走れるものの輪行にはやはり重いことを痛感しました。輪行は水道橋から台場までで、台場からの帰路は自走です。夏休み中の土曜日のゆりかもめは新橋から満員状態で迷惑にならないように輪行袋は連結付近に置きました。

いよいよ台場で自転車を組み立てて走り出すと爽快そのもの! サンダーバード博に行ってから船乗り場や公園、国際展示場前、豊洲大橋を経て築地、銀座から有楽町、丸の内、神田神保町と走りました。暑さは厳しかったものの空は遠くまで青く澄んでほどよい風もあって絶好のサイクリング日和でした。台場はだいたい思っていた通りの走行感でした。とにかく広かった。銀座はさすがに押して歩くこともありましたが、晴海通りからザ・ペニンシュラ東京の角を昭和通りに入ると時間の流れが突然ゆっくりになったような錯覚に陥りました。人通りは少なく、道の両側にはオープンカフェがテーブルとパラソルを並べてゆったりとした午後のひとときを演出する様は日本とは思えないほどでした。私もアイスコーヒーを前にしばしその光景に見入っていました。

その後は丸の内から神田神保町へ。神保町では古書店に寄りました。神保町の古書店を回っていると本の魅力というかパワーを直に感じて圧倒されるようでもあり、酔いしれるようでもありました。自分はやっぱり本が好きだということをあらためて認識しました。至福の時間の中にいるように思えてきました。智内兄助の画集とアール・ブリュットの本、そしてクラシックの中古CDショップではコリン・デイビスとLSOのシベリウスの交響曲全集を買いました。学生の頃の自分に戻ったようなひとときでした。休日の丸の内界隈は人も車も少ないのでロードバイクにはもってこいのコースでした。

帰路に寄った新東名の浜松SAにはローランドのショールームがあって久しぶりにピアノを弾きました。音はヘッドホンで聴きますが今の電子楽器はほんとによくできていて堪能しました。弾いたのは10分足らずでしたが左腕がムズムズして神経が目覚めたかのようでした。この感覚はずっと忘れていたものでした。

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ラフマニノフ

MacBook ProのHDDが倍の1TBになったのでここしばらく手持ちのCDからiTunesに曲を追加していたところラフマニノフのピアノ曲が思いの外多いことに気づきました。ラフマニノフの魅力は抗い難いものがあって聴くと自分が変わってしまいそうに思ったことがあって遠ざけていました。でも、CDの枚数は確実に増えていたわけです。iTunes Storeで購入したものもあるのでCDの枚数以上に楽曲があります。ラフマニノフの楽曲を一言で表すならばドラマチックということでしょうか。学生の頃、となりの大学のピアノ練習室に輸入楽譜のバーゲンで偶然見つけたラフマニノフのピアノ曲集を持ち込んで弾ける部分をピアノでなぞってその音の厚みやボリューム感に触れたことを思い出します。それから30年余、ラフマニノフを心乱されることなく聴けるようになったように思います。

BluetoothとiPad miniのその後

インプレッサのオーディオにiPhoneをBluetoothで接続してみたところ音質も使い勝手も申し分なく満足しています。パーツはBluetoothトランスリミッターとRCA=3.5mmステレオ変換コード、そしてIP-BUS=RCA変換コードです。作業は、インプレッサのセンターパネルをはずしてIP-BUSコードをオーディオの裏面に取り付けて、そこからパネル外側までRCA=ステレオミニ変換コードで延ばしてトランスリミッターを接続するというもの。コードの引き出しにエアコンのダクトを一時取り外したところを再度取り付けるときにうまくはまらずに汗だくで苦戦しました。今回取り付けたBluetoothトランスリミッターはデータをAACのままやりとりするとのことで音はクリアです。これでCDを車に持ち込んだりHDDに録音したりという手間が省けるだけでなく、iPhoneの3000曲がコード接続なしに高音質で聴けるようになったわけです。電話もハンズフリーで使えるとか。もちろんiPad miniとも接続できます。しかもUSBジャックがあるので充電もできる。Bluetoothトランスリミッター本体はイルミネーションがやや明る過ぎるとも聞いているのでパネルへの取り付けはしばらく使ってからと考えています。それにしてもこんなに便利になっていいのか!?と少しばかり警戒感がよぎるほどのテクノロジーの恩恵を実感するこの頃です。

テクノロジーといえばiPad miniにKindleアプリを入れて電子ブックを読みかけていてこれがなかなか便利ということがわかってきました。読みたいと思った本は悉く電子ブック化されていないのですが古典などは著作権切れで無料だし“ストア”のリストを見ていると興味をそそるものがいくつかあります。iPad miniひとつを持って行けばそのときの気分で小説からハウツーものまで選んで一時を過ごすことができます。時々無性に読みたくなる立原道造の詩集はiPhone3Gの頃から青空文庫で入れています。与謝野晶子現代語訳の「源氏物語」もいい。ハヤカワ文庫の名作もいい。ところで、アメリカでなぜ電子ブックが普及することになったかについて、先日、大学生から興味深い話を聞きました。アメリカは広大な国土で人口密度が低い所が多いのでそもそも書店がなくて電子ブックに頼ることになるというのです。なるほどと思いました。また、iPad miniは電車で立ったままでも読みやすく書き物もしやすいことがわかってきました。縦にして持つとバランスがとりやすいことと縦位置のときのソフトキーボードが大き過ぎず小さ過ぎずで入力しやすいのです。何かしら思い当たることがありそうです。

特別支援教育カンファレンスを終えて

勤務校の特別支援教育カンファレンスを終えてその余韻が続いています。カンファレンスとは会議の意。一方的な情報提供ではなく来場のみなさんとの双方向の意見交換や情報共有で一人ひとりがあらたな気づきを発見するというねらいがあります。とりわけポスターセッションはその核をなす手法です。私もかつての実践から1本出して話し続けました。ポスターセッションはリアルタイムの双方向のやりとりがスリリングでたまらなくおもしろい。30分話し続けるとさすがに顎の動きが鈍くなりはしたものの発表者としてもあらたな気づきがあって勉強になりました。続いてミュージック・ケアの体験の場をもちました。子どもたちの参加もあってそれはそれは充実したひとときとさせていただいたと感謝しています。カンファレンスと併せて三重・療育ネットワークの協力を得て「ライフ・サポート・フェスタ」を南勢地域で初めて開催することができたことも大きな一歩です。ご協力をいただいた業者のみなさまに心から感謝する次第です。私の中では早くも来年度の構想を描こうとしているところがあります。
夜は映画「風立ちぬ」のレイトショーを観に行きました。私には全編で堀辰雄の「風立ちぬ」が想起されて通奏低音のように感じられました。物語は激動の時代の中で数々の人生のイベントを正面から迎え、懸命に生きていこうとする人々を描いています。絵巻物のような抒情詩と思いました。