月別アーカイブ: 2001年6月

『ほしひとつ』

■『ほしひとつ』はNHKの『おかあさんといっしょ』で歌われてきた歌です。この歌をあらためてきく機会があって、その豊かな情感と音楽性に心底ほれこんでしまいました。
■ピアノで弾こうとしましたが手持ちの『おかあさんといっしょ』の歌集には入っていません。楽譜を探しに行く時間もないのでCDから採譜することにしました。採譜してコード付けをすると曲の構造がわかっていい勉強になります。『ほしひとつ』の冒頭はクリシェのエッセンスをちょっぴり効かせています。Aの最後2小節は最高音が2回出て低い主音で強引ともいえるような終わり方をします。Bは…雰囲気は短調に転調したかのようですが、実は、D-durからB-durへの転調です。CDの神崎ゆう子さんの歌はその曲想の切り替えが実に見事でほれぼれしてしまいます。
■『ほしひとつ』は神埼ゆう子作詞、坂田修作曲です。『おかあさんといっしょ』の歌のおねえさんとおにいさんです。歌詞を紹介します。(神崎ゆう子作詞)
ほしひとつ

よぞらを たび する ほしたちを
ちいさな ゆびで かぞえてごらん
あなたが うまれた ひに
ほしが また ひとつ ふえた

よぞらを たび する ほしたちを
ちいさな こえで かぞえてごらん
あなたが おしゃべり した ひ
ほしが また ひとつ ふえた

ながれぼしが ひとつ
ねがいごとは なに
ちいさい ころからの
ゆめを かなえてね

よぞらを たび する ほしたちを
いつか ふたりで かぞえて ごらん
あなたが およめさんに なる ひに
ほしが いっぱい

あなたが およめさんに なる ひに
ほしが いっぱい
■私は「およめさんになる」ことがすべての女性の目標だとは考えていません。「ほしがいっぱい」になる瞬間は人それぞれだと思います。そんなアンチテーゼを持ちながらも神崎ゆう子さんが歌う『ほしひとつ』の文脈に感じ入ってしまうのです。音楽の力はやっぱり大きい。

大城梨花&大城杏花のトワイライトコンサート

■6月9日(土)アスト津のギャラリーで大城梨花と大城杏花のフルートとピアノコンサートがあって行って来ました。会場は展示会などの多目的ギャラリーで、東側が床から天井まで全面ガラス張りとなっています。ギャラリーなので当然天井は高く、アルミの格子に区切られた窓からは津の街並みと伊勢湾が見渡せるという、それだけでキャンバスとよべるような空間でした。
■プログラムは、『愛のあいさつ』(エルガー)、『からたちの花』(山田耕筰)、『ひき潮』(マクスウェル)、『セレナーデ』(シューベルト)、『月』『想い』(大城梨花)、『熊蜂の飛行』(リムスキー・コルサコフ)、『亡き王女の為のバヴァーヌ』(ラヴェル)、『春をよぶ雨』『海に眠る』(大城梨花)、『ロミオとジュリエットからモンタギューとキャピレット、少女ジュリエット』(プロコフィエフ)、『革命』(ショパン)、『新世界より第2楽章』(ドヴォルザーク)、『ソナチネ』(サンカン)です。
■私は大城梨花のオリジナル曲がききたくて行きましたが、プロコフィエフの『ロミオとジュリエット』をプログラムに見つけてうれしくなりました。近頃またこのバレエ音楽を夜な夜なきいているからです。
■照明はギャラリー用のタングステンライトだけで、正面のガラス窓は時間とともに暗くなっていきます。
■大城梨花のフルートは常に高いテンションでコントロールされている音です。きいていてその緊張感と込められたメッセージがよく伝わってきます。とくに彼女自身の作品で生き生きと奏でられます。作曲も含めて、地方都市でこうして自分のペースで音楽活動を続けている音楽家は多くありません。敬服しています。
■大城梨花の作品はきくたびに“同時代”(コンテンポラリー)ということを意識してしまいます。今、同じこの時を生きる者のメッセージとして共感があります。彼女の作品は“癒し”ものではありません。うまくいえませんが、きく自分の中で“昇華”する何かがあるように感じます。
■『ロミオとジュリエット』は、ピアノがアップライトだったために音にならなかった音がたくさんあって残念でした。速いパッセージで鍵盤が戻らないのです。フルコンサートのグランドピアノでこの曲を弾くのは並大抵なことではないでしょうが、一度きいてみたいと思いました。