日別アーカイブ: 2000-06-01

久里浜だより15

■神奈川県秦野市の弘済学園に実地研修に行ってきました。弘済学園は知的障害の児童施設です。入園している210人のうち児童は170人で、40人は19歳~22・3歳の大人です。児童施設に大人が入っているのは全国的な傾向で、これは在宅が増えたこと、少子化、そして療育を続けるための延長入園が認められているからです。
■弘済学園の大きな特徴は、神奈川県立伊勢原養護学校の先生25人が施設訪問教育を行い、弘済学園の先生とTTを組んで子どもたちの療育・学習に当たっていることです。授業を参観させていただいたところ、例えば「音感」という時間には、8人の子どもたちに2人の養護学校の先生と2人の弘済学園の先生がTTを組んで学習を進めていました。
■知的障害、自閉症、ADHD、強度行動障害の子どもたちが入園しています。弘済学園の子どもたちは、家ではどうしていいかわからない、家族が疲れきってしまった家庭から来るとのことです。弘済学園では毎日の生活をわかりやすく構造化して、子どもたちが安心して生活できるように、ゆったりと時間をかけて接しています。
■自由見学の時間に「音感」を参観させてもらいました。
■音感…音楽ではありません。音楽という名前でもよさそうですが、あえて教科のにおいのする名前よりも子どもたちの受け取り方を大事にして名づけたようです。
■「音感」の時間のプログラムです。
「2」組(小学部低学年?)
1)はじめのあいさつ
2)シャボン玉が飛ぶ中を走ったり歩いたり
3)名前でよびかける歌…(この時間はここまでは見ていません)
4)スキンシップ1(室内アンサンブル曲)
5)スキンシップ2(ピアノ曲)
6)絵本『フレールジャック』(A2判のスケッチブック1ページの1枚の絵)
7)絵本『おかあさん』(同じく1ページ)
8)おわりのあいさつ

「1」組(小学部低学年?)
1)はじめのあいさつ
2)名前でよびかける歌(子どもたちに歌いかける人とピアノを弾く人)
3)スキンシップ1(室内アンサンブル曲)
4)ウォーキング(『となりのトトロ』の『さんぽ』)
5)絵本『おはようクレヨン』(ストーリーを追ったたくさんのページ。歌は谷山浩子)
6)おわりのあいさつ
■音感の部屋のオーディオ・システムがすごいものでした。ホーンスピーカー、セパレートアンプ、という凝りに凝ったシステムです。だから耳にやさしいやわらかい音です。これは1972年の建築時からだそうです。部屋の中には大きなグランドピアノと子どもたちのいすが8脚あるだけ。床はカーペットです。
■プログラムはあくまでも静かに落ち着いて、子どもたち一人一人に声かけとスキンシップをしながら進められます。
■ホーンスピーカーからのやわらかな音、先生のあったかくてすてきな声。名前でよびかける歌のときのピアノは、子どもたちに歌いかける先生の微妙なニュアンスに見事に合わせて、また、間奏は次の子どもに合わせてコントロールして子どもたちに語りかけます。自分に歌いかけてくれる先生の目を見て、手を握ったりさすったりしてもらっている子どもたちはほんとにうれしそうでした。授業を進める人とピアノを弾く人はやっぱりちがう方がいいと思いました。分担ですね。(この時間はビデオに撮らせていただきました。)
■元気一番という音楽の授業もあります。でも弘済学園の子どもたちはこの時間にリラクゼーションを求めているんだな、と思いました。入園前の安心できない日々を背負っている子どもたちの緊張を解きたいと願っているとのことでした。
■スキンシップは床にねころがったりいすに座った子どもたちの体をさすったりします。音楽はフォーレっぽい感じでした。フォーレではないと思いますが。
■音感の時間は音楽療法に近いアプローチを目指している、等の説明がありました。
■障害がある子どもたちが安心して暮らせる場と時間を用意して、そして作業学習などを通して自信がもてるように支援していく、それが24時間ケアの弘済学園の強みだと思いました。
■今日もまたまたたくさんの勉強で頭の中は飽和状態なので今夜の『久里浜だより』はこれで終わりにしますが、「構造化」の具体的な手立てなどお知りになりたいときはご一報ください。