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児童合唱

今週、小学校5年生の学年合唱を指導する機会が2回ありました。市内の連合音楽会に向けての練習です。日頃から歌いなれている子どもたちなので「こう歌って!」という指示になんとか付いていこうと約100人の子どもたちの躍動が伝わってきました。

曲は「もみじ」と「気球に乗ってどこまでも」の2曲です。どちらも3度の和音が平行するところが難しいわけですが「音を狙って!」と人差し指で音の上がり下がりを示すと面白いくらい付いてきました。

私が担当したのは2時間で、2回目のときはちょっと欲を出して「音楽に表情を付けよう」と切り出しました。表情の付け方のひとつ、楽譜の強弱記号の通りに歌ってと言うと冒頭を楽譜通りmp(メゾピアノ)で歌い始めるのは「違和感があります」と質問がありました。mpやpでの演奏は音楽の醍醐味のひとつですが小学生にはちょっと難しいか。それでも冒頭をmpで歌い始めようとする子どもたちの表情は真剣でした。

練習が進むにつれて身体(からだ)を揺らしたり手を回すように動かしたりと身体全体で奏でようとしている子どもが増えてきました。2時間で私が手がけたことはほんのわずかですが「先生の時間はこれでおしまい」と言うと「エーッ!」という声がして楽しんでくれたことが伝わってきました。

思い返すと小学校で合唱の指導をしたのは25年ぶりでした。それこそ「エーッ!」と思いました。それでも指がピアノ伴奏を覚えているのは人間の驚異なのでしょう。「気球に乗ってどこまでも」は初任の山里の学校の講堂で古いグランドピアノを夜な夜な練習した曲です。今週のように小学生の合唱を指導する機会はこの先ないかもしれない。それでいいわけですが、そう思うほど私にはとても楽しい2時間でした。

昨年、小学校の音楽の副教材のCDのセットと伴奏集、数冊の歌集を揃えました。教室に入りづらくいわゆる別室に登校する子どもたちといっしょに歌うためです。何曲かはパートに分かれて合唱もしました。その時、ひとりの子が「もみじ」という歌を知らないとつぶやいたとき、私の中で何か鉄槌のようなものが振り下ろされたように思いました。それが何だったのかは今もわかりません。「もみじ」を知らないとはどういうことか。別に「もみじ」を知らなくてもおとなになれるし生きていくことに差し障りがあるわけではありません。でも、私は「それってどういうことなのか」と自分に問いました。今も問い続けています。

昨年調達した児童合唱のCDはお気に入りを選んでオデッセイのHDDに入れてよく聴いています。私が小学校を離れて四半世紀の間にすてきな歌がたくさん生まれたことを知りました。子どものときにしか奏でられない児童合唱は珠玉の音楽だと思います。