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音楽と人との“Doing<Being”

■2月8日金曜日、三重県教育委員会主催の「小学校教科・領域(音楽科)における人権・同和教育推進講座」に行って来ました。
■午前中の講座、三重大学教育学部音楽科根津知佳子助教授の「人権・同和教育の視点に立った音楽教育」は、音楽療法士として活動していた根津先生ご自身の実践に基いた、音楽と人とのかかわりの本質的な部分に言及したたいへん説得力のある内容でした。
■根津先生の講座のキーワードは、「自己実現」「相互反応的な活動」「Doing<Being」でした。
■自己実現は言い換えればアイデンティティーの確認でしょうか。自分らしさ、自分の存在の確認、そして、それは他者のアイデンティティーを認める寛容の土台となるものです。自己実現的な人間像として根津先生は次の定義を提示されました。

◎自己実現的な人間像
現実をありのままに認知する
自己受容し、他人や自然も受容する
自発性を持つ
仕事に熱中する
独立を求める
自立的である
斬新な鑑賞眼をもっている
至高体験をもつ
(生命力あふれ、人生の意味が開ける神秘的で圧倒的な恍惚感)
社会に対する関心をもつ
親密な対人関係が結べる
民主的な性格をもつ
目標を達成する経過自体を楽しむ
敵意のないユーモア感覚がある
創造的である

■「教育の機会として、①コミュニケーション、②自己実現、③自尊感情の3点が保障されなければ子どもの人権が保障されたとはいえない」という論理は私自身納得がいくものでした。
■子どもの自己実現を求めるには指導者は子どもと相互反応的な活動をしなければなりません。予め決められたプログラムをこなすのではなく、指導者も、その場で何ができるかを探り、即興で作り上げいく過程で、子どもたちと「わからない、不安、迷い」を体験します。それらの活動は音楽の中で行われます。音楽の中で子どもたちと出会います。音楽で語り合います。
■音楽活動における子どもの評価はDoing<Beingで行います。見た目の評価はある意味で簡単です。「太鼓が叩けるようになった」という類です。でも、見えない部分、心の奥底で起こっているかも知れない部分も積極的に評価したい。「できた」よりも「どう子どもたちが存在しているか」で評価します。実際の評価は難しいけど、これも私には納得できるものでした。
■根津先生のセッションのビデオで使われていた曲は、ノードフ&ロビンスのものと思われる太鼓の曲と、二俣泉の『クリモカ・ベル』、そして、ペンタトニックなどの即興でした。
■あと、ライフステージとしての児童期のとらえ、音楽の心理的側面と社会的側面、スエーデンの音楽療法、人権から見た音楽活動と盛りだくさんのたいへん充実した講座でした。
■今夜は仲道郁代の『ロマンティック・メロディー』をきいています。シューマン、メンデルスゾーン、ブラームスとファニー・メンデルスゾーン、クララ・シューマンのふたりの女性、そして、シューベルトの19世紀の音楽家たちの作品集というちょっとおもしろいアルバムです。仲道郁代のピアノはちょっとお疲れのとききくとちょうどいいかな・・・