月別アーカイブ: 2001年8月

トマトソースとパエリヤ

■久しぶりにトマトソースを作りました。寸胴の中のトマトたちはまるで砂金のように点々と金色に輝くオリーブオイルとほどよくなじんでいきます。トマトたちはイタリア生まれ、オリーブオイルもイタリア生まれだから、この極東の地のお鍋で再会ですね。そして日本の野菜たちといっしょになってスリリングな味を作っていきます。何回作っても少しずつ味や香がちがいます。
■私が作るトマトソースは東京銀座の“ラ・ベットラ・ダ・オチアイ”のレシピです。すごくレアなトマトソースです。素材が生きているのです。“ラ・ベットラ・ダ・オチアイ”は日本でいちばん予約がとりにくいレストランといわれています。でも、ランチは当日の予約順なので、この1月にランチを食することができました。どのディッシュもはっきりしたキャラクターをもっていて、私の舌は目を白黒? そこで、トマトソースのパスタにチャイブが入っていることにびっくりしました。トマトソースもレアっぽいけど、チャイブのレアっぽさはまた格別です。シンプルで大胆なアイデアに感動してしまいました。
■今回のトマトソースにはタマネギのみじん切りを入れました。理由は、冷凍のトマトソースを使うときは時間がないときが多くて、タマネギのみじん切りをしなくてもいいようにするためです。もちろん、タマネギの味も香も歯ざわりもちがってきます。でも、これが現実的な選択なのです。“ラ・ベットラ・ダ・オチアイ”のレシピとちがうところです。
■イタリア料理が好きだ!と意識したのは、昨年、横須賀に単身赴任していたときでした。食堂の食事がいまいちで、おいしいものが食べたい食べたいと思っていたとき、青山のクレヨンハウスに行って、気がついたらイタリア料理の本ばかり立ち読みしていました。家に帰ったら自分で作るんだ! 地元のイタリア料理店も一通り回ってますますその深みに…また時間が足りないではないか!
■ここのところ、パエリヤが気になっています。志摩スペイン村でパエリヤの鍋も買ってきました。素材を生かす、オリーブオイルをふんだんに使う、というあたりはイタリア料理とすごく似ているんだけどな…どうしてパエリヤはイタリアに生まれなかったのだろう。なぜスペインに? この秋はパエリヤに挑戦です。

#$%&’…?

■台風一過、日中は暑いもののさすがに秋らしさがちらほらと見え始めましたね。私が住んでいる三重県松阪市の西部は堀坂山の山並みから続くなだらかな丘と田畑がとても美しい里山です。白米城跡がある桝形山の頂上から見る風景は最高です。そこから豊かに実った金色に輝く稲田をD30で撮りたいと思っていましたが、空が澄む前に稲刈りが始まってしまいました。
■D30の勉強はだんだん裾野が広がって#$%&’…?といったところです。『西川和久のデジカメ&フォトショップ スーパーテクニック』(インプレス 2001)を読んで、私のD30も現像パラメータのコントラスト、シャープネス、彩度をみんな“弱”に設定してみました。レタッチに耐えるデータを得るためです。PhotoShopはプロの使いこなしに目が点となるし、“電塾”の“考えれば考えるほどわからなくなる解像度を徹底的に理解する”(解説:早川廣行)をプリントして読んで#$%&’…?となっていますが、ハードの勉強はそれなりにおもしろいものです。ソフトとしては、内田ユキオの『ライカの写真術』(ナツメ社 2001)を読んでいます。ライカは気になるカメラです。ライカを仕事の道具として使っている内田ユキオの言葉も不思議な引力を感じます。やはりライカで仕事をしている小原誠の写真も好きです。白岡順もライカを使っているのだろうか、と思うフォトグラファーです。
■8月26日日曜日の“ファイン・アート・写真家講座”に受講の申し込みをしました。仕事がつまっているので東京との往復は深夜の高速バスを使います。ハードスケジュールですが、今動かないと何も始まらないと思ってのこと。受講の申し込みをしたとき、「作品があったらお持ちください」と言われてはっとしました。今まで“作品”を意識しながらも“作品”を作ってこなかった。やっぱり今動くべきだと思いました。

テレビテレビテレビ!

■12年近く使ってきたテレビがついに映らなくなって買い替えとなりました。急なことだったので、とにかく安いものを探しました。ワイドサイズとか、デジタル放送とか、ハイビジョン放送とか、テレビも変わってきていると感じてはいましたが、いざ買うとなるとわからない。行った先の量販店にはくわしい店員がいなくて、展示品の取説を見て、たぶんこれならしばらく使えそうだと思った29インチのフラットブラウン管、BSチューナ内臓、D1端子付きを49,770円で買いました。
■テレビ台を組み立てていて、はたと気づいた。ずいぶん大きい。今までのは何インチだったのだろう…品番を見ると27という数字が…そうか、家では大きく感じて、店では小さく感じて、さらに大きな29インチを選んでしまったのでした。
■映りはとにかくきれいです。テレビの解像度は画面の大きさに関係なく一定なのでこれくらい大きくなると画面が荒れる感じになると思っていましたが、どうしてこんなにもきれいなのだろうと不思議です。これまで何回も見てきたビデオも、オリジナルを見ているかのような鮮明さです。その画面を見ているだけで目が点になってしまいます。フラットの画面は圧迫感がありません。ボディはシルバーですっきりした印象です。それがとても自然でやさしい感じがします。こうなるとDVDプレーヤーもそろえたくなりますが、PS2があるのでちょっと見送りです。
■不要となったテレビは家電リサイクルに回しました。郵便局で家電リサイクル券を買ってメーカー指定の引取所まで運ぶだけです。費用はかかりますが10年以上も使ってきたテレビをリサイクルに回すのはちょっとした感慨がありました。

東京ディズニーランドと『千と千尋の神隠し』

■7~8日、東京ディズニーランドとイクスピアリに行ってきました。ホテルはシェラトン・グランデ・トーキョー・ベイ・ホテルに泊まりました。まとめて“東京ディズニーリゾート”というネーミングで、9月4日には東京ディズニーシーがフルオープンします。
■東京ディズニーランドは実に11年ぶりです。やっぱりものすごい人人人で、朝5時に着いたのにすでに列ができていました。小さな子どもたちも楽しそうに何時間も待っているのにはほんとに驚いてしまいました。ディズニーランドって、一体何だろう…
■朝一番に行ったので“プーさんのハニーハント”もほとんど待ち時間がなくて、かえって壁面の物語を読む時間がなくて残念だったくらいです。プーさんは今いちばん人気です。ショップに行ってもプーさんだらけ! 何をしてもパッとしないけど、マイペースのプーさんからは“今のままの自分でいいんだよ”というメッセージが伝わってきて、“今”にアピールするところが大きいのだと思います。
■今回は、なぜか、“音”に敏感な自分にびっくりしました。“イッツ・ア・スモールワールド”の音は、古いAMラジオが精一杯音を出しているようで不快でした。アトラクション自体が古くて、だから、オーディオ機器も録音も古いのかも知れません。でも、もうちょっと生理的にやさしい音でもいいんじゃない?と思っています。
■ディズニーランド全体では音のマネージメントに感心しています。園内放送はないし、音楽も流さない。声を機器に通すときはそれなりの効果を求めるときだけです。直接的な説明はみんな肉声です。これがすごく心地よい空間を提供しているのです。
■園内に音楽が大きく流れるのはパレードのときだけです。私はエレクトリカルパレードの音楽が好きで、今回もそれがいちばんの楽しみでした。固定スピーカーとパレードの各セクションから流れる音楽は一体どういうシンクロをさせているのだろうと不思議です。
■イクスピアリでは宮崎駿の新作『千と千尋の神隠し』をみました。よかった。ほんとによかった。
■私の興味は音楽です。音楽は久石譲、今回はどんな音楽を作ったのだろう。『天空の城ラピュタ』も『魔女の宅急便』も『となりのトトロ』も好きなんですが、宮崎駿の映画音楽でいちばん好きな『耳をすませば』の音楽担当は、意外にも久石譲ではないのです。坂本龍一と『ラストエンペラー』で音楽を担当した野見祐二が『耳をすませば』の曲を書いています。久石譲の音楽を意識してきいたのはNHKスペシャル『驚異の小宇宙・人体』が初めてでした。以来、彼の音楽はよくきいてきたつもりですが、『耳をすませば』はちがったのです。久石譲の音楽はメロディーラインが絶品で、野見祐二の『耳をすませば』の音楽も似ています。でも、どこかちがいます。
■さて、『千と千尋の神隠し』の音楽は、今までの久石譲とは一味も二味もちがいました。あのストーリーならどうしてもそんな音楽になってしまうのかも知れませんが、私にはすてきな音楽でした。ちょっと“現代音楽”っぽくて多彩で、クラシック音楽みたいな楽器の使い方で、私は控えめな音楽を一生懸命きこうとしていました。映画が終わったら近くのCDショップでCDを買ってしまいました。
■映画そのものもよかったです。比喩とか直接的なメッセージとか、それはそれとして、宮崎駿のイマジネーションの自由さにあっと驚いて感動してしまいました。怪物のような神様たちがぞろぞろと骨休めにやってくる湯屋の姿は、いつか、夢でみたちょっとこわい光景なのです。すごく高いところで足元がない! 居心地がよいはずなのに、何か、終わりのないことをしている自分がいる。夢でみたそんな光景をスクリーンでみせられてるとぐいぐい引っ張り込まれてしまいます。
■千尋は川でおぼれかけたことがあります。ハクと空を舞うとき、そのときの記憶が一気によみがえります。川の水の中でハクと出会ったことを思い出すシーンには泣いてしまいました。自分の存在の不思議さ、自分って何? そんな哲学的な問いかけとひとつの答が『千と千尋の神隠し』にはあるのではないでしょうか。“神”というキーワードのとらえ方は私は曖昧ですが、『千と千尋の神隠し』に登場する神様たちは風呂に入るし酒も飲むしで、妙に人間臭さがあって楽しい。
■今回の旅はカローラフィールダーSタイプで中央高速道路を走りました。ディーゼルエンジンのルシーダとは比べものにならないくらい快適なドライブでした。