月別アーカイブ: 2021年2月

幾たびかの『静かでにぎやかな学校』

先週、仕事の帰りに寄ったスーパーの書店で1冊の本に目が釘付けになって即買いしました。長嶋愛『手話の学校と難聴のディレクター ― ETV特集「静かで、にぎやかな世界」制作日誌』(ちくま新書 2021)です。

この番組のことは何度かこのブログでふれたことがあります。カメラにまとわりついて言いたい放題手話でおしゃべりする子どもたちの生き生きした姿に冒頭から圧倒された番組です。聴こえないこととか手話とか、この番組のテーマとなっていること以前の、とでもいうのだろうか、当時のNHKのウェブサイトにあったプロデューサーの言葉「初めてこの学校の子どもたちを見たときに、考えさせられたこと。それは、子どもの育ちに必要なことってなんだろう…ということでした。」は番組を観た私がすぐ考えたことでもありました。明晴学園の子どもたちがこんなにも生き生きと「子どもらしい」のはどうしてなのだろうと。まるで魔法にでもかけられたような思いがしました。そのウェブサイトはなくなってしまって読む言葉できずとても残念に思っていました。それから2年余り、この本と出会ったのです。

この本のサブタイトルはこの番組を担当したディレクターが難聴であることを示しています。私は今まで知りませんでした。そうだったのかという思いもありました。そして、この「制作日誌」を一気に読んでしまいました。子細はともかく、難聴の著者がNHKでディレクターとしてこの番組の制作を担当したときの着想や取材、カメラマンやプロデューサー、編集者らとのやりとりの「言葉」に惹きつけられます。彼らを動かしたのは、子どもたちの手話でした。もう痛快ですらある。付箋だらけになってしまいました。この本ははやる気持ちを抑えつつ読んだのでまた落ち着いてじっくり読みたいと思います。

立春に山行を思う

2月に入って年度末モードになってきました。今年度は仕事の幅が広がったので落ち着いて書きものをする時間がなかなかもてずにいました。仕事が一つひとつ区切りがついてきてほっとしています。今度はいろいろ書きものへのインスピレーションが湧いてくるという不思議な状態です。

思い返すと春先から新型コロナウィルス感染対策の「自粛」で職場とスーパー、病院くらいしか行かなくなって行動の自由を失くしたような気分が続いていました。これには自覚以上に参っていたことがわかってきました。ちょうどその頃、精神科医の松本俊彦さんの「不要不急は大事」という主旨のインタビュー記事が新聞やネットに掲載されてそうそう、そうだよなと、自分もこれなんだ、と気づかされました。当事者がいちばんわかってないことはままあるものです。ブログも少しずつ書いていきたいと思います。

今日は例年より一日早い節分とか。朝から登山用のリュック、オスプレイ・ケストレル38を丸洗いしました。ショルダーベルトの汗の塩の白いすじが目立ってきたからです。バスタブに10センチくらい湯と洗剤を入れてジャブジャブもみ洗いをすると湯がすぐに黒っぽくなって、また、いろんなゴミが浮いてきました。サンルームに干しましたが乾くのは明日か明後日か。あと、靴もそうじしてオイルを塗りました。靴はモンベルのアルパインクルーザー2500です。私には安くはない買い物でしたが最初からこれにすればよかったと思うくらいフィットして頼りがいがあります。どこまでも行けそうな安心感があるのです。他の靴はちょっと履けないかな。

日曜日に小林百合子=文、野川かさね=写真『山小屋の灯』(ヤマケイ文庫 2021 単行本2018刊)を購入しました。山小屋とは日本アルプスなどの大規模な施設とばかり思っていたのですが家族や一人で切り盛りしているような小さな小屋がけっこうあってそれぞれの歴史はまた驚きでした。なぜ人はそれをするのか。なぜ山に登るのか、なぜ山小屋で登山客を迎えるのか。紹介されているほとんどはそんな小さな山小屋です。文字通りの小屋、か。そのどれもがオーナーの持ち味いっぱいで魅力もいっぱいと思いました。こじんまりとした小屋で時折り訪れる登山客を自分なりのおもてなしで迎えるという、そんな生き方もあるんだと思いました。

山の本は学生のとき何冊か読みました。高校のとき山岳遭難の実話にもとづく合唱組曲「山に祈る」を聴いて、その中にあったと思うのですが、「なぜ、山に登るのか」という台詞は永遠に答えのない問いのように思いながらも山には人を惹きつける力があるのだろうと漠然と考えるようになりました。大学ではワンダーフォーゲル部の友人がいて山行やトレーニングの話をよく聞きました。しかし、如何せん、私には山行に必要な道具類を買うお金はなかった。本ばかり読んでいました。文部省(当時)の登山のテキストまで買って読んでいました。それから40年後、ロングトレイルと思って少しずつ集めた道具は登山に使うことになりました。今は県外には行けませんが数少ないリフレッシュの時間となっています。