月別アーカイブ: 2001年5月

EOS630

■昨日、2台目のEOS630を手に入れました。もちろん中古です。14800円でした。シャッター幕に少し油がにじんでいます。このまましばらく使ってクリーニングまたはシャッターユニットを交換することになると思いますが、ボディがすごくきれいで気に入りました。
■EOS630は初代EOSの最終モデルで1989年の発売です。ボディの芯は金属で、適度な大きさと重さ、頑丈さが魅力です。1台目のEOS630は今年1月末の東京出張のとき、歩道の雪が凍結していて転倒。私の体重をうまく逃がしてくれたものの、なんと、ボディの底を割ってしまいました。でも、メカにはなんのダメージもなく、その頑丈さに驚きました。プラスチックボディの適度なねばりと強度がうまく働いたのだと思います。ISレンズも大丈夫でした。シャッターに難ありとはわかっていていも、やっぱりEOSはこれだと思っています。もちろんEOS1シリーズは別です。
■EOSKISSをもっている知り合いから、きれいな写真が撮れないと相談を受けています。ピントが合わない、色がきれいに出ないと、メーカーに点検に出したところ異常なしだったとか。キャノンのEOSシリーズの特性として、露出のアンダー傾向があるようです。これはポジの特性に合わせた設定との説もありますが、ネガにとっては色のにごりの原因となります。また、キャノンの評価測光は意図的過ぎて、条件によってはびっくりするような極端な“修正”もあるようです。私は1段低くフィルム感度を設定していますが、それでも尚アンダー傾向を示すことがあるくらいです。また、EFレンズは光を十分に回さないとその性能を発揮しないのではないかと思っています。光が十分回って、そこから撮影者の意図的な操作が始まる。そんな気がしています。
■私が使っているEFレンズは、28~135mmF3.5~5.6IS と、50mmF1.4の2本です。手ブレ防止機構にはほんとに助けられています。私は自然光(常光)だけで撮るのが好きです。シャッター速度が1/8であろうと1/4であろうとおかまいなしにシャッターを切ります。ISなら見事に止まってくれます。
■さて、私はこの2台のEOS630をどう使おうとしているのか。1台はフジフィルムのポジ、トレビ100を入れます。もう1台にはモノクロのプレストかアクロスを入れます。 これから麦秋がきれいな季節です。カラーもいいし、モノクロもいい…なんと欲張りなんだろう!

ニューヨーク・ニューヨーク!

■私のお気に入りのテレビ番組にNHK-BSの『NEWYORKERS』があります。この番組に限らず、アメリカ合衆国(以下「アメリカ」)を取り上げた番組はけっこう意識して見ています。私はアメリカが好きなのかも知れません。
■1989年春、新潮社の『小説新潮』3月号臨時増刊として『アメリカ青春小説特集』というMOOKが出ました。冒頭から始まる特集「アメリカ作家の仕事場」は、それまで日本の作家たちの、ちらかった書斎の写真ばかり見ていた私にはとても新鮮でした。日本の作家たちはそこで「貧乏、酒、浮気」という宿命を負って原稿用紙に向かっているかのような印象がありましたが、アメリカの作家たちは、明るい部屋でタイプライターやコンピュータ、あるいはスパイラルノートや3ホールのルーズリーフを前にしてカメラに向かって微笑んでいました。
■いつだったか、こんな話を聞いたことがあります。日本語で書く小説はよく売れても100万部だが、英語で書く小説は英語を話す国でそのまま出版できるので桁違いなセラーを記録する。だから1つの作品による収入も多くて、次の作品のための構想と取材に必要な十分な時間を使うことができる。それだけに大作が生まれやすいと。
■『アメリカ青春小説特集』に取り上げられた20代30代の作家たちは私にとってたいへん魅力的でした。同じ歳の作家を探しました。ローリー・ムーアがいました。このGWに書店でローリー・ムーアの本を見つけたとき、ふと、自分は取り残されているのではないのかという観念に襲われてしまいました。彼女は私と同じ年に生まれました。それぞれに歩む道がちがうことはわかっていても、時間の流れ方のちがいまでも受け入れるほど私には心のゆとりがないように感じました。『アメリカ青春小説特集』の取材を受けた時、彼女は勤務先のウィスコンシン大学から奨学金が出ているので小説の執筆に専念していられるとのことでした。こんな時間の使い方は私には与えられない。自ら求めるならリスクも付いてくる。ひとりの人間が生み出すものにそれだけ期待し、投資し得る社会の背景にある文化の深さ、あるいは寛容さ、あるいは貪欲さに私はため息をもらしました。それだけアメリカはふところが深いのでしょうか。とにもかくにもローリー・ムーアは小説を書き続けていました。
■NHK-BSの『NEWYORKERS』には“自分探し”にこだわる人たちがとり上げられています。その中の何人かは成功し、何人かはつつましく自分なりの暮らしをしています。いずれにせよ、私には魅力ある生き方に映ります。アメリカンドリームをものにできなくても、多様な生き方がそれぞれ認められる街、それがニューヨークといったら笑われるでしょうか。ウェブサイトを渡り歩いてもそんな印象があります。自分探しの旅先にニューヨークを選ぶ人は少なくありません。私もそのひとりになるのかも知れません。

D・ケネディ『ビッグ・ピクチャー』

■このゴールデンウィークに買った本で、久々に読書に没頭した休日となりました。(新潮文庫)
■写真が好きな私には撮影から現像、焼付、そして作品にまつわる記述がこたえられない本です。また、登場するパソコンとプリンタ、IBMのThinkPadとCanonの携帯インクジェットプリンタという組み合わせは私がふだん使っているシステムと同じで、これも親近感があります。
■ストーリーは、一流法律事務所に勤める弁護士がさまざまないきさつからフォトグクラファーになるというもので、もちろん、これはまだ読んでないあなたにミステリーを紐解くおもしろさを残しておきたいためのほどほどの紹介ですが、安定した高収入の仕事を辞めて自分の感性と技術で作品を作っていくフォトグラファーになるという設定は“絵心”をいだいたことのある人ならぐっと惹かれるところではないでしょうか。写真は私にとって脇役以上の配役です。
■「あとがき」にもありますが、この本は、主人公が犯した殺人という罪がいつどこでどのように報いを受けるのかがもの足りなく、読んでいて腑に落ちないところがあります。