久里浜だより21

■やっと雨があがりました。窓を開けて久しぶりに潮騒をききながら部屋で過ごしています。
■昨日は1日中検査検査でした。検査といってもドッグじゃなくて、『発達障害のアセスメント2:演習』で、K-ABC、田中ビネー、WISC-Ⅲ、遠城寺式・乳幼児分析的発達検査、CLAC-Ⅱ、PRS、SM社会生活能力検査、自然観察法、を延々とやりました。その他、紹介だけの検査も含めるとすごい数の検査の研修をしたわけで、1日があっという間に終わってしまいました。
■最後に話があった「AAMRによる診断、分類、サポートシステム」がたいへん興味深いものでした。AAMRとはAmerican Association of MentalRetardation(アメリカ精神遅滞学会)で、またまたアメリカです。
■第1段階として「精神遅滞の診断」をします。1)知的機能がIQでいうと70~75以下、2)2つ以上の適応スキルにおける問題、3)発症年齢が18歳以下、という3つを満たす場合に精神遅滞と診断します。
■第2段階は「分類と記述」です。「知的機能と適応スキル」「心理・情緒」「健康・身体・病因」そして「環境」の諸要素についての「分類と記述」です。コミュニケーション、身辺処理などの項目についてそれぞれ「力(strength)」と「力
の弱さ(weakness)」を記述します。「環境」の項目は「生活環境」「職場環境」「教育環境」そして「最適環境」(自立と相互依存を助け、生産性を高めて、コミュニティへの統合を進める最適環境を記す)です。散文的な記述となるのでしょうか。
■第3段階は「必要なサポートとプロフィールのレベル」で、「知的機能と適応スキル」「心理・情緒」「健康・身体・病因」そして「環境」の各項目について「サポートの機能」「活動」「サポートのレベル」を記入します。「サポートのレベル」とは「一時的intermittent」「限定的limited」「長期的extensive」「全面的pervasive」で、それぞれにくわしい内容が例示されています。
■この「AAMRによる診断、分類、サポートシステム」は、障害の程度を「軽度・中度・重度」などと分類していません。その人の「力(strength)」と「力の弱さ(weakness)」をコミュニケーションや身辺処理などについて記述して、それぞれに必要なサポートをしていこうというものです。根底にはインクルージョンの思想があります。「重度だからここでこれ」というような割り振りとも受け取られかねない考え方とは根本的にちがう、と私は思います。
■今日は午前中が研究討議、午後は講義、夕方は研究討議の続き、夜は文集の編集でした。なんと忙しいことか!午後の講義は筑波大学講師の宮崎信明先生の『脳のはたらきと障害』でした。これは明解な話でした。たくさんたくさん、これでもか、というくらいの情報量でした。話は、新生児、脳性麻痺の仕組み、てんかんの仕組みと薬の知識、ADHDと自閉症についてでした。
■超未熟児(700~800g)のスライドはかわいそうでした。髪の毛くらいの太さしかない腕の血管に点滴の針を入れられて、体には心電図や二酸化炭素などのセンサーが付けられていました。その子が成長したときの写真を見るとホッとしました。でも、反対に小学校6年生で髄膜炎になって重い障害が残ってしまった例もありました。
■脳性麻痺はかつて脚にくる場合が多かったのですが、それはちょうど脚の動きを司るところの脳が発達するときにトラブルがあったからだとのことです。34週、1500gで生まれてくる子どもに多いそうです。しかし今は医学が進歩して34週くらいで生まれてもうまく育ち、脚に麻痺がくることも少なくなって、脳性麻痺もどんどん減って、体全身に重い麻痺がある子どもが残り、また、増えてきているのです。
■脳の発達期のある時期のある場所のトラブルが障害を起こしている。障害は脳が完成する前にこわれて、発達の過程で他の部分が影響を受けて起こるのではないかということです。自閉症は脳の右と左の機能分離が発達の過程でうまくいかなかったことで情緒不安定になっているのではないか、ということも言われてきているそうです。
■てんかんはいろんなタイプがありますね。薬の特徴を知っておくべきだとその説明がありました。また主治医と学校の連絡で使っている例をコピーさせていただきました。
■てんかんの子どもはプール水泳をさせない、するんだったら親がプールサイドで見ていること、としている学校があります。でも、プール水泳の途中は大きな心配はないとのことです。脳の働きを抑制するシステムは興奮しているときに強く働くので、脳の勝手な暴走(てんかん)を起こさせにくくするからなんだそうです。そうでない場合、興奮していときに発作が起こりやすい場合もありますからプール水泳は医師の判断によります。
■てんかん発作がこわくて学校行事に参加しないことは子どもの発達にとってマイナスになるので、プール水泳に限らず、修学旅行などへの参加も、投薬の指示をきちんと守っているか、家族が参加を強く希望しているか、などの条件を整えている病院もあります。
■ADHDがリタリンという薬で改善されるという話は前に書いたように思います。でも薬に頼るだけでなく、刺激を少なくする、友だちとうまくいくように配慮するなど教育的アプローチも合わせて行って医療と教育が融合してうまく乗り越えさせることが大事。
■では、自閉症はどうかというと、今のところうまくいってない、つまりいい薬がないんだそうです。TEACCHプログラムなど教育プログラムしかうまくいかない、という医師もいるようです。
■宮崎先生はずーっと喋りっぱなしでしたがまだまだ話し足りないと言ってみえました。もっともっと教えてほしかったけど半日3時間ではこれが限界か、残念!

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