久里浜だより20

■金曜日から日曜日にかけて自宅に帰っていましたのでご無沙汰してしまいました。
■家に帰ったらハッピー(猫)のお腹が大きくなっていて、なんと、日曜日の朝、4匹の子猫を産みました。子どもは大喜び。ハッピーはぐったり疲れていました。ハッピーはグレーのトラです。子猫もみんなグレーっぽい。養子先募集しまーす!
■9日金曜日の午前中の講義は大阪工業大学教授角田禮三(かくた…)先生の『交流による教育』でした。角田先生は養護学校の校長で定年まで3年を残して退職されたとのこと。したいことがあったから。それはボランティアです。ちょうど阪神大震災が起こって馳せ参じた。そうしてボランティア三昧の人生を楽しんでいたら大阪工業大学から声がかかって、若い人たちに自分の考えや体験を伝えたいと大学の先生になる。奥さんと娘さんからは「おとうちゃん、すじがとおらん!」と大反対されたそうな。講義にだんだん熱が入ってくると大阪弁でえらい勢いでしゃべるのでおもしろい。吉本や!(ご本人がそういうとる) 講義そのものの内容もよかったです。最後に涙が出ました。
■角田先生は「生きる力」とグローバル(地球規模)な考え、そして子どもも先生も自分で動いて体験することの大事さを強調してみえました。
■角田先生がスコットランドの養護学校に行かれたときのことです。子どもたちが電卓を持ってスーパーに買い物に行きます。「これは安いけど傷みが激しい。賞味期限をよく見なさいよ…」と消費者教育を実地でして、子どもたちは欲しい物の金額を電卓に入れて買えるかどうか確かめてからレジで支払う。さすが生協発祥の地や、と感心。しかし、「電卓つこたら計算することおぼえやへんのとちがいまっか」と聞いたら、その学校の先生が「ちょっとちょっとみてみ、あの子、そろそろ計算できそうや。こんど来るとき電卓にカラの電池入れとくんや。それで、さあ、買い物やいうときに、あっ、電卓が使えん! そんなこともあるやろ、だから紙の上で計算もできやなあかんのや、と勉強するんや」と言ったそうな。大笑いしてしまいましたが、日本はどうや? 1対1で一生懸命九九覚えた、けど使えん…69人の研修員はシーンとしてしまいました。
■角田先生は知的障害の養護学校と通常の学校との交流に関わってみえます。交流にポランティアを組み込んでいます。養護学校と通常の学校の子どもたちが力を合わせて計画と準備をして老人ホームに行き、障害がある子もない子もともにボランティアをします。このあたりの話は細かいので省略!(角田禮三編著の『ランティア教育のすすめ』明治図書\2060にくわしい)
■OECD(経済社会改革機構)の「21世紀に向けて求められる教師の資質能力」をご存知ですか? 私は知らなかったんですが、7つの資質能力の4番目に「障害児を指導する力量をもつこと」とあるとのことです。世界中のすべての教師にその力量が求められています。言われてみれば当然なことですけどね。あとの6つの資質は「先生たちよ、自分の言葉で語れるか?」というようなもの、だと私は受け取っています。
■この講義のノートを読み返すと話があちこち飛んで字が乱れ切って読みづらい。そういえば話がよくあちこちした講義でした。
■最後に知的障害の養護学校の子どもたちが坂本九さんの『見上げてごらん夜空の星を』を手話入りで歌って交流相手校の子どもたちがびっくりしたというエピソードを紹介していただきました。私たちも手話入りで歌いました。ふだんボランティアを受ける側になりがちな子どもたちが、ちがう障害をもつ人とのコミュニケーションの手段である手話で歌う、というその「文脈」に、そして坂本九さんのあったかい歌声に、ホロッとしてしまいました。とてもよかったです。詞も曲もいいですね。(よくできている曲なので私は「クリシェ」という伴奏パターンの練習に使っていました。だからなつかしい。)みなさん、子どもたちと手話で歌いませんか!
■金曜日の午後は東京学芸大学名誉教授の山口薫先生の『発達障害児と学校教育』という講義でした。山口先生はまた「文部省学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の指導方法に関する調査研究協力者会議主査」という肩書きももってみえます。これってずいぶん長ーい名前です。この会議は結果発表までになんと7年もかかっています。「名は体を表す」といって笑ってはすませられない時間のかかりようです。
■講義はLDの子どものセッションの記録ビデオやイタリアのインクルージョン教育のスライドも見せていただいて、また、ポーテージプログラムの紹介もあって3時間があっという間に過ぎてしまいました。山口先生は日本ポーテージ協会の会長でもあります。ビデオのセッションはうまくいった例とはいえ子どもは劇的な変わりようでした。
■金曜日の2人の講師の先生もイギリスやアメリカ、イタリアなどで障害児教育のようすを実際に見てたいへんよかったと話をされていました。またある講師の先生は「自分の子どもが障害もっていたらアメリカに住まわせたい」と言ってみえました。私のノートにはその前後に「これは教育の問題だけではない。文化etc…」「アメリカでできることは日本でもできるんじゃないかな」というメモが残っています。がんばろう!
■今日12日月曜日の午前中は京都市立西養護学校教頭の朝比奈覚順(あさひな・がくじゅん)先生の『高等部教育と進路指導』でした。朝比奈先生も話に熱が入ってくると関西弁でまるでケンカ腰の講義となってきます。事実、学校でも教委でもよくケンカなさったとか…。お名前からしてどこかお寺のご住職かな、左手首には念珠もある…がっちりした体格だし昔なら僧兵だな、とここだけの話だよ(^_^)
■朝比奈先生は「養護学校生徒の進路開拓をめざす・巣立ちのネットWORK」を創設された方です。朝比奈先生に限らず、進路関係の講義の先生方は「みなさんは卒業生がどうしているか、どんなところで働いているか、知ってますか?」と必ず問いかけをされます。高等部だけではない、小学部も中学部も子どもたちの進路を知っていなければ今どうあるべきかわからない。私にとってこれは課題です。
■午後は旭出学園教育研究所研究員の服部美佳子先生の『発達障害のアセスメント1:理論』という講義でした。明日は実際にさまざまな検査の演習です。
■この日曜日にインターネットで障害児教育や障害がある子どもの親のホームページをたくさん見ていました。目の前の子どもがいちばん大事なんですけど、ときにはホームページの親の声に触れることも大事かな、と思いました。
■『久里浜だより』にたくさんメールをいただいてありがとうございます。お返事が書けなくてごめんなさい。今夜もごめんなさい。

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