月別アーカイブ: 2000年6月

久里浜だより19

■いよいよ梅雨入りですね。明日から天気がくずれると聞いて今朝早く洗濯をしました。いい天気で昼までにすっかり乾いたのに取り込まなかったら午後の講義の終わり近くに雨が降ってきてシャツの肩が濡れてしまいました。あーあ…
■今日の講義は上智大学教授の飯高京子先生の『言語の発達と障害』です。
■レジメのいちばんはじめの項目には、
1.はじめに
1)自分自身を知り、好きになろう
2)自分の 器を大きさ と やわらかさ
3)ひと として 生涯 成長しつづけよう
とあります。
■講義のはじまりは先生ご自身の満州での体験でした。終戦直前にソ連が攻め込んできて女と時計を要求したこと、日本軍も同じことをあちこちで行ったこと、両親が身寄りのない子どもを100人以上連れて帰国する途中病気で次々死んでしまったこと、帰国して70人以上のクラスで勉強する中ついていけない友だちができることを工夫したこと、教わった先生から特殊教育をアメリカで学ぶようにすすめられてアメリカの大学に行ったこと、大学で助手をしながら11年アメリカで勉強して帰国したこと…。言葉で形容できないくらいの話でした。
■そして次の項には、
2.ことばの発達についての基本的な考え方
1)ことばの発達は全体的な発達の一部である
2)発達には一定の順序性と 方向性がある
3)発達に 個人差が つきものである
4)発達は子ども自身の のびる力と 子どもをとりまく環境との 相互のかかわりあいの中で可能となる
とあって、講義はその理論的背景とビデオやスライドを使ってのケース・スタディでした。
■飯高先生も人と人との関係、コミュニケーションの大切さを強調してみえました。人と人との信頼関係があって初めて言葉の学習も可能となるのです。そうそう、コミュニケーションは音声言語だけではありませんね。
■昨日さくらんぼ保育園でたくさん体を動かしたので今日の座学はかなりがまんするところがありました。仕方ありませんね。あと、とりとめのないことを書きます。
■いつだったか、会社や学校帰りの人でいっぱいの新宿駅の構内を歩いているとブルース・ハープがきこえてきました。ハーモニカで吹くブルースです。路上パフォーマンスです。私は音のする方に行ってみました。すると、ネクタイにダークスーツのサラリーマンと思しき長身の青年がビジネスバッグを後ろに置いてブルースを奏でているのです。彼にとってそのひとときが彼のアイデンティティーなのかも知れません。痛快だと思いました。昼間はオフィスで黙々と仕事をしてアフターファイブの新宿駅で路上パフォーマーに豹変するのです。なんだかすてきでしたね。
■今年の知的障害教育コースのメンバーは近年にない集まりなんだそうです。乗りやすい。しかも悪乗り。でもよく遊ぶヤツほどよく仕事?をする。一昨日の実地研修先の教頭先生の話がけっさくでした。「昨年の研修員の方は良識ある紳士的な方ばかりで…」と、質疑の時間に質問もなくあっさりと終わったそうなんですが、今年はすごかったです。次々と質問が出て3人の教頭先生は回答に焦ってました。(私も質問してしまいました。知りたいことは知りたいのだ!)
■研修棟では毎日どこかでパソコン教室が始まります。休みのたびに秋葉原でパソコン買ってくる人がいて初歩の初歩からインターネット、画像処理まで一気に勉強しています。南大沢学園の中学部の音楽の時間にパソコンでヤマハのピアノプレーヤーをドライブしていたのを見てパソコンを買う決心をした人もいます。NISEの研修制度はひょっとしたら経済波及効果も大なのかも知れません。またそれだけコンピューターはいろんな可能性をアピールするモノなのでしょう。これもネットワークがあるからこそなのだと思います。コミュニケーションですね。私自身もニフティのネットワークと資産を利用したくてパソコンを使い始めました。1996年夏、4年前のことです。今期の研修員は研修期間が終わってからもインターネットで情報のやりとりをします。私は音楽ソフトの使い方をレクチャーして音楽情報のネットワークを広げようとしています。1人1人は1本の細い根です。でもその1本1本が集まると強靭な生命力をもつ草がたくましく成長します。研修が終わってから研修が始まる、そんな気がするこの頃です。だって、あと1月しか久里浜にいられないのだからアフター久里浜を考えてしまいます。

久里浜だより18

■2日連続の所外研修で疲れました。
■昨日6日火曜日は東京都立南大沢学園養護学校で実地研修をしました。高等部の産業技術科、手作り教具、中学部の音楽の授業、等々たくさん勉強になりました。
■帰り、南大沢駅で貸切バスから降りて埼玉県深谷市に向かいました。深谷市は遠くて遠くて深谷駅に降りたときには夜8時半を回っていました。デニーズで夕食を食べてホテルに着いたのが10時でした。
■今日7日水曜日は朝からさくらんぼ保育園に行きました。さくらんぼ保育園に行ってまず目に飛び込んできたのは4メートルくらいの土山とそこで泥だらけになって遊ぶ子どもたちと先生でした。保育園のまわりは高い高い木々にかこまれて広い木陰を作っています。そこにいるだけで心が落ち着く空間でした。
■子どもたちも先生もはだしです。私たちもはだしになるように言われました。さくらんぼ保育園をわかってもらうには子どもたちといっしょに過ごすこと、それが第一歩というわけです。
■子どもたちと“リズム”をしました。先生が弾くピアノでいくつかの動きをします。背骨をやわらかくする動き、風やトンボになりきって走り、ヒノキの床に腹ばいになって両生類の動きをする…子どもたちはほんとに楽しそうに動いていました。私も楽しかったです! 子どもの頃を思い出していました。さくらんぼ保育園の理念はそうして体で感じることがいちばんの近道だということがわかりました。理論付けはきちんとありますがわざわざ言葉にすることもないでしょう。体を動かすと心も開く、これは小串里子先生の思索ともつながります。
■さくらんぼ保育園には障害がある子どももいました。知的障害の子どもで、リズムで楽しそうに走ったりしていました。これまでもたくさんの障害がある子どもたちを育ててきました。学童保育所も運営していて、養護学校の生徒は高等部まで入ることができます。
■新潟大学の大学院生も私たちといっしょに“実習”に来ていました。彼の専門は建築で、保育園の環境はもちろんのこと、保育園を核にした地域の横のつながりを研究テーマにしているとのことでした。彼のテーマは“保育園の地域センター化”とも言えます。さくらんぼ保育園と保護者の連携についても質問していました。大学でもそうした研究が進む中、学校と保護者、学校と地域の関係も変わってきます。私なりのビジョンをもって考えていきたいと思いました。
■さくらんぼ保育園を出たのが3時半。すぐに東京に向かって渋谷のブックファーストに行きました。久里浜に来て初めて大きな書店に行きました。教育の本ってこんなにたくさんあるのか、と感動すら覚えました。小串里子先生の本と交流学習の本を買いました。
■その後、同行の4人で食事をして閉店間際の東急ハンズで3穴のノートを買って、またまた電車に乗って、自分の部屋に帰ったら10時を過ぎていました。疲れました。明日からまた座学です。

久里浜だより17

■3日土曜日に大宮の小串里子先生のご自宅に行ってきました。1時から延々6時間半、夜の7時半過ぎまでたくさんのお話を伺い、夕食までご馳走になってしまいました。なので私は軽井沢に長野新幹線で行くことになりました。
■小串先生のお住まいは日本版ログハウスです。よくあるログハウスのように天井が高くてロフトがあります。でも法隆寺の五重塔などと同じ「田の字」工法で日本の杉材がふんだんに使われていてほっとする空間です。壁のウォーホールの作品などはみんなホンモノ! えっ!と小市民は電卓に並ぶ0の数を想像してしまった。
■小串先生は94歳のお母さんに経管栄養や吸引などの「医療的ケア」をしながら、食事の用意をしながら、表現についてたくさんの話をしてくださいました。夕食は、麦や玄米、ごぼうなどが入ったご飯にオリーブオイルをかけて焼いた鮭、そしていっぱいの野菜でした。薄味でとてもおいしかったです。
■またまたたくさんノートを取りましたが、今はキーワードだと思う言葉を並べることしかできません。でも、お伺いした研修員3人が求めるところだと思っています。音楽・美術・体育という「教科」は「表現教科」だということです。
■私がまとめたキーワードです。
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小串里子先生との話し合いから(2000.6.3 SAT)

・21世紀は個人の個性よりもコミュニケーションの中から何か出てくる。
・社会性をもった美術。
・造形遊びはやってみてそのおもしろさがわかる。大学生もおもしろい。
・行為が問題。結果は問題ではない。
・体動かして何かすること大事。
・集中、呼吸の安定。
・その子らしさが出ていることが大事。プロのアーティストはコンセプトを出すことに懸命。
・音楽→心が動く→体が動く→出てくるものでまた体が動く。
・体が動くと心が開放される。
・年をとっても創造的な人は60歳以上がいちばん創造的。自己表現は簡単じゃない。それをさがしてどこまでもやっていく。
・音楽の時間に先生の歌をきく、手遊び、リズム…心が開き、他の時間に落ち着く。
・楽しみのないコミュニケーションない。
・生き生きと楽しめて体を動かすことの意味、表現教科でバラバラで技法の順序性追わない。21世紀はこうなる。
・個性を強く出せばいいというのでない。今教育界で起こっている問題すべてコミュニケーションがうまくいってないことから。
・癒しへのエネルギー。
・心を開く表現体験。
・仮装じゃなく変身。
・総合表現学習。
・表現の拡大。
・表現しようという心、だれかが引き出す、自分で引き出す。
・動けば気持ちは開く。人を動かす。
・プレイセラピー、サイコセラピー。心の治療になる。
・音刺激大事。バラバラにするよりもまとめる方が心が開く。劣等感もたない。まちがいというものない。出てきたものから評価するもの探す。先生は評価できなければならない。「どういうふうにしたいのか」。失敗はない。
・偶然性から発見していくことの心のメカニズムが表現では大事。
・みんなでやるとコミュニケーションがある。
・美術、音楽教育は統合されていく。枠はない。子どものトータルな表現としてやっていく。
・コラボレーションの方向でいく。
・心を開く表現活動。
・五感を統合する。体育と美術、無関係ではない。
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※“collaboration”は「共同、協力、共同研究(制作)、共同研究などの成果、共同制作品、共著」という意味ですが、続く“collaborationist”には「《軽蔑的》(敵などへの)協力者」の意味があります。(小学館『 PROGRESSIVE英和中辞典』)
■前にも書きましたが小串先生は都内の養護学校でずっと勤務されて、「子どもの城」やNHKの「ストレッチマン」をプロデュースしてみえます。そのほか、ここNISEの短期研修の講師、武蔵野美術大学の講師、現代音楽の作曲家とのコラボレーションなどもされてきました。40年間一貫して「表現」行為の意義を追及、最近やっと「あなたのいうようになってきましたね」と言われるようになってきたとのことです。
■小串先生が具体的にどうやって授業を進めてみえたのか、それはまたの機会にします。小串先生の実践は本になっています。写真がたくさん入っていて3000円を越す値段となったので、小串先生が若い人たちが買えるようにと1冊あたり約1000円、350万円を負担することにされたとのことです。だから2200円という値段です。
■小串里子著『ワクのない表現教室~自己創出力の美術教育~』(フィルムアート社 2000.2.21 2200円)
・養護学校から美術大学まで…障害・年齢の枠を超えて
・美術教育の思索と27の事例集
■軽井沢では絵本美術館のブラティスラヴァ世界絵本原画展がとてもよかったです。『スイミー』の原画を見ることができました。1963年の作品なんですね。私が小学校に入学する前の年です。原画はどれも見る人の目を強く惹きつけます。目録を買ってきましたがそれを見ながら美術館で見た原画の肌触りのようなものを思い出しています。でも印刷されても絵本はやっぱりいいものです。
■軽井沢は寒かったです。夜12度の中を半袖で歩いた。翌日は晴れて浅間山がとてもきれいに見えましたが寒いのでまいりました。
■今日5日月曜日の講義は北九州市教育委員会主幹の野依啓多(のより…)先生が『養護学校における授業研究の実際』というテーマで、北九州市立八幡西養護学校の取り組みを中心に話をしていただきました。八幡西養護学校は肢体不自由と病弱の養護学校です。やはり重度の子どもたちばかりです。高等部と中学部のビデオを見ながら度会養護学校を思い出していました。ビデオは総合学習の「外に出かけて楽しもう」(高等部)と「かっこよくなろう」(中学部)のようすでした。「かっこよくなろう」では茶髪を選んだ生徒の髪をほんとに茶色に染めてしまうのだそうです。もちろん保護者には前以て総合学習のねらいを文書で説明し、単元に関わる1人1人の生徒の家庭でのようすについて保護者から情報を提供してもらって学習活動を計画します。くわしいくわしい資料があります。小学部は年間計画だけですが、小・中・高の3つの学部が縦の連携をもって計画しているものです。入用でしたら連絡してください。(平成8年度なので「総合的な学習」ではありません)
■明日はまたまた朝7時集合で南沢学園に実地研修です。明後日は自己研修で深谷市のさくらんぼ保育園でリトミックの研修です。明日の夜は深谷市に泊まることになります。さくらんぼ保育園では朝9時半から2時という長時間のプログラムで給食も食べます。なんと500円。1食500円の給食なのでどんなに豪華なのだろうと期待もしています。でも動きやすい服と着替えを用意してほしいとの連絡もあって、ひょっとしたら1日保育士をするのかも知れない。これは未体験だ!

久里浜だより16

■久里浜の猫の名前が1匹わかりました。車の下で寝ている牛になりたい「茶トラ」は「みかん」でした。今日、図書室からの帰り、NISEの裏庭でいつものように寝ている茶トラをゴロゴロいわせていたら、「この子、みかん…みかん、名前」と後ろから声がしました。教えてくれたのは長期研修員でたぶん中国からきている人でした。「この子、男の子、だから、みかん」と言うのですが、なんで男だったら「みかん」なのだろうか。(彼女はここで英語が実用となっています。つまりそれだけ英語ができる人がここにはいるのだ!)
■今日の講師の福山平成大学教授の田口則良先生のお話では、昨年は17匹の猫がいたそうです。しかも噛もうとしてきたとか。今年は5匹しか見なくてどうしたんだろうと話してみえました。
■田口先生の講義のテーマは『授業研究の理論』でした。支援でいちばん大事なことは先生が「待つ」ということ。そして「受け止める」。もう20年も前にNISEで講演を依頼したある先生は、子どもからの主体的な関わりを待つことの大切さを示すために、なんと、ずーっと黙っていて、「どうしたんですか?」などの問いかけにも「うん」とか「あー」しか言わなかったとのことです。信じられない話ですがホントらしい。なんでそれで講師料もらえるの?と思ってしまった。
■授業例の紹介もありました。実体験、直接体験をすると「生きる力」がつきやすいが、失敗してもすぐには手伝わず、回数を重ねることによって子どもが学ぶのを待つことの大切さを強調されました。
■そして「集団を生かした個の学習」の具体例がいい勉強になりました。集団の構造化…これだけだとよくわからないけど、みなさん興味がありましたらなんとかします。指導案もあります。集団の力をうまく利用することでかなりの能力差があってもいっしょに学習できる、という実例でした。昨日の弘済学園でもグループ・ダイナミクスの話が出ました。
■最後に北九州の養護学校の実践例で、肢体不自由と知的の重度の重複障害がある子どもの学習が紹介されました。小学部5年生の男の子。ADLが1~3ヶ月。先生が抱いて好きな歌を歌って揺らすとうれしそうな表情がちょっと出る…。そのようすを見た田口先生は、先生と子どもは共感以上、一体となっている、と感動されたとのことです。養護学校の先生は歌や言葉がけのときに「間」をつくって子どもからの返事や要求を受け取り、学習を進めていく。そうして子どもがかすかながらも表情で要求すること、それが彼の生きる力に結びつくんだという指導です。その話に研修生はシーンとしましたが、私は勤務している度会養護学校の毎日を思い出してしまいました。
■その先生の歌を「すごく上手、ききほれた、こっちまで気持ちよくなる」と田口先生はしきりに感心してみえました。養護学校の先生は歌が上手な人が多いですけど、とくに上手という先生がいますね。たぶん才能でしょう。昨日弘済学園で音感の学習を担当されていた先生もそうでした。私はそんな人がうらやましくて仕方がない。
■今日は1人の先生の講義を午前中3時間、午後も3時間、それぞれ10分の休憩をはさんでずーっときいていました。いちばん前でひたすらノートをとりながら。ノートは29ページも使った。ぼーっとしてきて先生のジョークまでみんな書く。今日までに使ったノートは300ページをこえました。ということは研修が終わる頃には600ページか…。こんなノートの取り方は下手です。でも言葉の積み重ねから見えてくるものがあるような気がします。
■こだわりの強い私ですからノートにもこだわっています。A4のルーズリーフを見たことありますか? B5だと26穴、A4だと30穴です。B5は携帯に便利だけど1枚の情報量が少ない。A4は視覚的にも広々感があっていい。ところが、ファイルするための30個の穴とフォルダーに整然と並んだ30個のリングは私には几帳面過ぎて長く付き合えないのです。A4のメリットをわかっていながらも「やめてくれー!」という気分になってしまいます。でもルーズリーフのメリットは無視できないので、今回の研修ではA4の3穴のルーズリーフを使うことにしました。A4といっても縦の長さが2~3センチ短い。だからA4版の資料はファイルできないというやっかいなサイズです。しかも穴が3つしかないので1つの穴にかかるストレスが大きくて破けやすい。それでも使いたい。これだと不思議にいろんなアイデアが浮かんできて仕事や趣味がはかどります。NASAのマニュアルもみんな3穴のこのサイズです。つまりアメリカの規格です。ファンはきっと多いですよ。三重県では四日市のパワーシティーのオフィス・マックスで入手できます。ほんとは無地を使いたいのですが東急ハンズでも無地は置いていません。私の筆記用具は中字の万年筆です。東急ハンズで2000円で買った安物ですが太い字がおおらかで安心感があります。インクはモンブランの明るい明るいブルーを使っています。南の海の色のつもりです。
■明日は朝から大宮に行って小串里子先生のお話を聞かせていただきます。そのあとは…軽井沢だ!

久里浜だより15

■神奈川県秦野市の弘済学園に実地研修に行ってきました。弘済学園は知的障害の児童施設です。入園している210人のうち児童は170人で、40人は19歳~22・3歳の大人です。児童施設に大人が入っているのは全国的な傾向で、これは在宅が増えたこと、少子化、そして療育を続けるための延長入園が認められているからです。
■弘済学園の大きな特徴は、神奈川県立伊勢原養護学校の先生25人が施設訪問教育を行い、弘済学園の先生とTTを組んで子どもたちの療育・学習に当たっていることです。授業を参観させていただいたところ、例えば「音感」という時間には、8人の子どもたちに2人の養護学校の先生と2人の弘済学園の先生がTTを組んで学習を進めていました。
■知的障害、自閉症、ADHD、強度行動障害の子どもたちが入園しています。弘済学園の子どもたちは、家ではどうしていいかわからない、家族が疲れきってしまった家庭から来るとのことです。弘済学園では毎日の生活をわかりやすく構造化して、子どもたちが安心して生活できるように、ゆったりと時間をかけて接しています。
■自由見学の時間に「音感」を参観させてもらいました。
■音感…音楽ではありません。音楽という名前でもよさそうですが、あえて教科のにおいのする名前よりも子どもたちの受け取り方を大事にして名づけたようです。
■「音感」の時間のプログラムです。
「2」組(小学部低学年?)
1)はじめのあいさつ
2)シャボン玉が飛ぶ中を走ったり歩いたり
3)名前でよびかける歌…(この時間はここまでは見ていません)
4)スキンシップ1(室内アンサンブル曲)
5)スキンシップ2(ピアノ曲)
6)絵本『フレールジャック』(A2判のスケッチブック1ページの1枚の絵)
7)絵本『おかあさん』(同じく1ページ)
8)おわりのあいさつ

「1」組(小学部低学年?)
1)はじめのあいさつ
2)名前でよびかける歌(子どもたちに歌いかける人とピアノを弾く人)
3)スキンシップ1(室内アンサンブル曲)
4)ウォーキング(『となりのトトロ』の『さんぽ』)
5)絵本『おはようクレヨン』(ストーリーを追ったたくさんのページ。歌は谷山浩子)
6)おわりのあいさつ
■音感の部屋のオーディオ・システムがすごいものでした。ホーンスピーカー、セパレートアンプ、という凝りに凝ったシステムです。だから耳にやさしいやわらかい音です。これは1972年の建築時からだそうです。部屋の中には大きなグランドピアノと子どもたちのいすが8脚あるだけ。床はカーペットです。
■プログラムはあくまでも静かに落ち着いて、子どもたち一人一人に声かけとスキンシップをしながら進められます。
■ホーンスピーカーからのやわらかな音、先生のあったかくてすてきな声。名前でよびかける歌のときのピアノは、子どもたちに歌いかける先生の微妙なニュアンスに見事に合わせて、また、間奏は次の子どもに合わせてコントロールして子どもたちに語りかけます。自分に歌いかけてくれる先生の目を見て、手を握ったりさすったりしてもらっている子どもたちはほんとにうれしそうでした。授業を進める人とピアノを弾く人はやっぱりちがう方がいいと思いました。分担ですね。(この時間はビデオに撮らせていただきました。)
■元気一番という音楽の授業もあります。でも弘済学園の子どもたちはこの時間にリラクゼーションを求めているんだな、と思いました。入園前の安心できない日々を背負っている子どもたちの緊張を解きたいと願っているとのことでした。
■スキンシップは床にねころがったりいすに座った子どもたちの体をさすったりします。音楽はフォーレっぽい感じでした。フォーレではないと思いますが。
■音感の時間は音楽療法に近いアプローチを目指している、等の説明がありました。
■障害がある子どもたちが安心して暮らせる場と時間を用意して、そして作業学習などを通して自信がもてるように支援していく、それが24時間ケアの弘済学園の強みだと思いました。
■今日もまたまたたくさんの勉強で頭の中は飽和状態なので今夜の『久里浜だより』はこれで終わりにしますが、「構造化」の具体的な手立てなどお知りになりたいときはご一報ください。