森の教室

先週末の金曜日と土曜日は長野県伊那市の保育園と小学校2校、中学校の公開研究会に行ってきました。伊那市立伊那小学校の研究会は昨年も参加していますが前日の保育園と小学校、中学校を訪れるのは初めてでした。その中で伊那西小学校の「森の教室」はとりわけ印象深い訪問であり不思議な体験をすることになりました。

伊那西小学校は「林間」という広大な学校林があってそこでも学習が行われます。私が参観したのは総合的な学習の時間でエノキの落ち葉の下で越冬するオオムラサキの幼虫の観察でした。場所は「森の教室」です。壁は教室前方の一面だけで3方は柱だけという教室です。屋根は教室前方に向かう片流れの光を通す樹脂の波板が張ってあります。そこで7人の子どもたちが地元のチョウの研究者から探し方を教わります。先生はこれまでの学習の足取りを追って再構成し、本時の学習活動を明確にしていきます。子どもたちは興味津々でわくわくする気持ちが伝わってきましたが全体としてとてもおだやかでゆるやかに感じられました。その日は風もなく、やわらかな陽の光が冬枯れの森に降り注いでいました。そして、子どもたちがエノキの落ち葉を一枚ずつめくっていくとほんとにオオムラサキの幼虫が見つかって子どもだけでなく参観者も小さな声で歓声を上げていました。私には自分の身体も心も森との境がなくなって溶け込んでいくような不思議な体験となりました。子どもたちはその時しか体験できない珠玉のような時間を過ごしていると思いました。子どもの時にこうした自然の中で心躍る体験をすることで子どもたちが将来にわたるどれだけ大きな生きる力を自らの内に育んでいることかと考えました。しめくくりの森林ライター浜田久美子さんの講演「森の恩恵を子どもたちに」も共感するところが多々ありました。伊那市は山に囲まれた街です。雪が積もった木曽駒ケ岳の頂は白く輝き、東に望むアルプスの山並みは夕日に淡いオレンジ色に染まります。そして冬枯れの木々のなんと美しいことか。毎日の登下校や校舎の窓からこうした自然が見える中で育つ子どもたちはおとなになってから何度もその風景を思い出すことでしょう。講師の浜田久美子さんが伊那市の森に居を構えられたことについても共感するものがありました。

アイキャッチ画像は伊那の空です。

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