小沢征爾の「白鳥の湖」

フィギアスケートのグランプリのフリーで浅田真央がチャイコフスキーの「白鳥の湖」を使っていて久しぶりに聴いた曲がいくつかあったので全曲を聴こうと思いました。ところが全曲盤のCDを探していて全曲の全貌がよくわからないとわかって焦りました。バレエ音楽は「ハイライト版」というエディションがあってこれは持っているのですが、学生の頃FM放送から録音してよく聴いた曲がなかなか聴けなかったりします。また、有名な曲なので「全曲盤」もいろいろある。プレビューも参考にして選んだのは小澤征爾がボストン響を振った1978年の演奏でした。「音楽的には魅力的だがテンポが速過ぎて踊れない」と複数のプレビューがありながらも評価の高い録音です。ボストンシンフォニーホールでの録音らしくエッジの効いたダイナミクスの大きな演奏となっています。オーケストラが鳴り切っているのは小澤マジックです。テンポはバレエを観たことがなくても速いと思えるものですが聴いていて実に気持ちがいい。ウェットな感傷をかなぐり捨てた骨太の透明感が爽快だ。小澤の全曲盤の曲数は45曲で、詳しい人によるとこれでもまだ収録されてない曲もあるとかないとかですが今回はそこまで追求する気はありません。「白鳥の湖」の音楽を長時間浴びるように聴くことが目的ですから。私が学生の頃繰り返し繰り返し聴いたのは第2幕「白鳥の踊り パ・ダクシオン」のバイオリンソロの部分です。チャイコフスキーの音楽はバレエ音楽に限らず情感を露にするある透明感のようなものが感じられてときどき無性に聴きたくなります。バイオリン協奏曲や「悲愴」はその最たるもの。この「白鳥の湖」はテンポが速いといっても150分にもなる収録時間なので午前午後の一コマのBGMとして最適かも知れません。若き小澤の躍動する音楽が爽快です。冬に向かうこの季節は毎年チャイコフスキーが聴きたくなります。

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