本2題

ジュネーブ国際音楽コンクールのピアノ部門で8年ぶりの1位で優勝した萩原麻未のピアノをニュースで聴いて、これはただごとではないと思いました。ラヴェルもすごかったがシューマンの「子どもの情景」の澄んだ音もなかなか聴けないものでした。曲の解釈というより音楽としてどうあるのかを真っ直ぐな感性で求めるような演奏です。今の若い感性だと思う。某紙の見出しの「リアルのだめ」に膝をポンと打ちたくなりました。ウェットでないところがいい。均整のとれた永く聴ける音楽が奏されることを期待しています。ニュースのインタビューに応える萩原麻未のバックがけっこう田舎のように見えて、あれはジュネーブなのだろうかと思っていました。
辻邦生『西行花伝』(新潮社 1995)が届きました。ハードカバーで手もとに置きたいと思って探していた本です。Amazonのマーケットプレイスではすでにコレクターのカテゴリーでとても手が届くものではありませんでした。届いた本は青森県の古書店からで、インターネットのおかげでこうしたニッチな買い物ができるわけですが、旅先の古書店で見つけるのが絵に描いたような出会いでしょうか。辻邦生は機会があれば少しずつ集めておきたい作家です。
日本評論社の「こころの科学セレクション」は第一線の研究者の文章を集めたシリーズで、ひとつのテーマを多角的な視点から読めるところが内容からもお得感があります。同シリーズの『子どもの精神障害』も然り。内容は精神疾患だけでなく、自閉症や知的障害、不登校、ひきこもり、非行など、思春期を中心として社会的な課題として今後ますます取り組みが求められるテーマが取り上げられています。発行が2002年ということも考慮しながらですが、目の前の事象の深みに入り込みがちな状況を見つめ直す視点を与えてくれる1冊です。メンタルヘルスが国家的な課題になりつつあるように思っています。
今夜はジョン・ルイスの「バッハ プレリュードとフーガ vol.1」を静かに聴く。

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