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IQ84 ?

『1Q84』を「IQ84」(知能指数84)と間違えて本を購入したと日本LD学会会長の上野一彦氏がブログ(2009/6/15)に書いています。『1Q84』には、しかし、ディスレクシアという言葉が登場します。高校生の女の子、ふかえりです。発達障がいが広く正しく理解されることは私もたいへんうれしく思います。『1Q84』に描かれているディスレクシアの状態像は決してネガティブなとらえではありません。また、ふかえりはディスレクシアという一点で登場しているわけではありません。ディスレクシアであることは魅力ある個性を醸し出すひとつのファクターと読むことができます。発達の偏りを完全になくすことはたいへん困難ですが、自他ともに強みと弱みを理解して幸せに生きていくことがもっと求められて然るべきだと考えます。
東京のホテルでNHKのニュースを見ていてはっとしたことがありました。派遣で自動車関連産業で働いていた人が金融危機に端を発する不景気で解雇されて次の仕事がなかなか見つからないという40代の男性の苦境を伝える内容でした。その男性の顔に私は勉強がわからなくて教室で困っている小学生の顔を重ねてしまいました。教育は、様々な教育があるわけですが、教育は彼が「生きる力」を育むことに機能できなかったのかという愕然とした思いになりました。その前の夜、新宿駅前の歩道で見たストリートライブの若者たちの懸命さに立ち止まって歌に聴き入ってしまったのでそのニュースは余計に強い印象となったのかも知れません。ニュースとストリートライブのシーンが彼らのすべてではないことは承知しながらも私にとって大きなメッセージとなりました。国際的な機関から「日本は今後求められない労働者を生みだしている」というような指摘を受けたと何かで読んだことがあります。閉塞感があるときは短期的な対応でつなぐことも大事ですがその先に何を目指すのかという長期的なビジョンを感じられることはもっと大切なはずです。

『1Q84』1巻読了

読んでいた本から顔を上げると山の稜線に近い雲の間から牡丹色に染まる空が横に長くのぞいていました。午後7時過ぎ、出張からの帰りでした。東京では3日間とも低い雲に覆われた梅雨空でした。帰りの新幹線が浜松にさしかかる頃にやっと青空が見えましたが、前に青空を見たのはいつのことだったか思い出せずにいました。長い雨でした。
この3日間は会議の連続でどの会議も延びたので休憩も少なく、エコノミークラス症候群になってはたいへんと脚を動かすことを心がけていました。しかし、思わず身を乗り出して聴き入ってしまう情報がたくさんあってテンションは知らず知らずのうちに高くなってしまいました。3日間の情報を整理するだけでもかなりかかりそうです。
今日読んでいた本は村上春樹著『1Q84』でした。先週の金曜日の夜、帰りに寄った書店に『1Q84』の1巻がありました。店で見るのは初めてで、それも1冊残っているだけでした。最後の1冊でなければ買わなかったかも知れない。レジでいつも要らないと断っているカバーを付けてもらいました。表表紙にカバーをかけて裏表紙まで回すとカバーがずれていたようで黄色い本の帯が細い三角形に見えていました。それを直したいというレジの女性の気持ちがぎこちなく動く指先から伝わってきましたが、待たせると悪いと思ったのか、肩を少しすぼめてそのままオレンジ色の袋に入れました。ネットで買うとこんなこともないなと思いながら車に向かいました。よくある毎日のよくある光景の中にも実にたくさんの出来事があるのものだ。『1Q84』を読み始めると描き方の密度感が私のものの感じ方ととてもよく馴染むのがわかりました。でも、内容は怖い本です。時間がなくてもついつい本を開いてしまいます。今夜1巻を読み終えて夜遅く2巻を買いに行きました。