一年の終わりに思うこと

広島と山口に旅行に行ってきました。広島は宮島と平和記念公園、山口は萩と秋吉台です。
広島を訪れるのは初めてで、広島平和記念資料館と原爆ドームは実際に行かないとそのメッセージを肌で感じることができないことがわかりました。平和記念資料館も公園も訪れる人が多くて、とりわけ若い人たちが多いことはたいへんいいことと思いました。また、外国人の姿も少なくありませんでした。日本は唯一の被爆国として世界に原爆と戦争の根絶を訴える使命を背負っていることを強く思いました。
萩では幕末から明治、昭和に至る激動の時代に国を動かす多くの人々を輩出した松下村塾について考えることが多くありました。吉田松陰が松下村塾で教えたのはわずか3年足らずでしたがその影響はたいへん大きなものだったわけです。松下村塾の説明では、塾生ひとりひとりに適切なテキストを選び、主体的に学ぶことを大事にしたとか。そして塾生が自らの志を確信し、大きく育てるための指導を吉田松陰が担いました。教育の大切さと責任の重さを吉田松陰と松下村塾は教えてくれます。
同時に私は幕末の薩摩藩へも思いを巡らせていました。NHKのドラマ「篤姫」の総集編は篤姫の人となりを表すエピソードが凝縮されていて興味深く観ました。とりわけ第1集では自分で確かめないと気がすまない彼女の姿が実に頼もしく思えました。「おなご」だからこそと見込む薩摩守も懐の深い大きな存在だ。彼らに共通するところは何か。それは、常に現状にとどまっていないということだと思います。そこにあるのは続く変化に反応する自分と絶え間ない思考、そして、迷いと悩みです。的確に反応する力は絶え間ない思考が育てるものと私は思います。だから悩むことを恐れてはならない。姜尚中の『悩む力』はきっとそんなことが書いてあるのでは!?と思っています。NBonline(日経ビジネスオンライン)の「著者に聞く ノウハウ本を捨てよ、悩む力が閉塞を打ち破る 政治学者、姜尚中氏が語る『悩む喜び』の極意」(2008.5.26)という見出し、そして、Keywordが「悩む力 夏目漱石」であることも興味深い。私自身、学生時代にいちばん身近に思い、多く読んだ作家が夏目漱石です。悩むことはしんどいことだが悩むことを恐れてはならないのだ。
大晦日に灯油を買いに出て寄った書店で何気なく手にした本を拾い読みしていて読まずにいられなくなって買った本があります。ゲイリー・ハメル&C・K・プラハラード著、一條和生訳『コア・コンピタンス経営 未来への競争戦略』(日経ビジネス文庫 2001)です。邦訳の初出は1995年ですから14年も前の本ですが、私には新しい。
今年は世界金融恐慌というべき状況で終わり、新年を迎えることになります。アメリカの金融危機、ビッグ・スリー破綻の危機、トヨタの失速から学ぶことは私にとっても大きいものがあると考えています。ジャストサイズ、リスクマネジメント、超長期的展望、フェアネス、等々。そして、今年、何度も考えさせられたことは、市民を軽んじる企業や国家は終焉を迎えるということです。新しい年にはやはり大きな変化を求めてしまいます。オバマ新大統領の登場は私にとっても期待するところが少なくありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です