野田式音楽運動療法から学んだこと

■野田燎先生が模擬セッションでサザンのリクエストがあって『TSUNAMI』を演奏した後、堰を切ったように話し出しました。「今までのことはええやん、明日からのこと考えよう」そういう歌、ということで、サザンの『ホテル・パシフィック』の1コーラスをサックスで吹いて、そして、『真夜中のナイチンゲール』のフルコーラスをサックスと歌で奏でました。『さよなら大好きな人』も。そのときの野田先生は音楽好きな素顔を見せてくれたように思いました。
■誰でも好きな音楽への想い入れは言葉にできないくらいもののがある。その想い入れを伝えるいちばんの方法は自分で奏でること。その音楽をニーズとしている人への共感として奏でる音楽は譬えようもなく真摯なものだ。野田先生が音楽療法の中で独自の道を歩まれることになったことの理由と意味がわかったように思いました。音楽のジャンルを問わず、その音楽に秘められたシチュエーションを自分のものとして追体験することでクライエントの物語を共に紡ぐのだ。適切な選曲をして最高の演奏を提供することで。これは、でも、みんながしていることではないのか!? 野田先生のセッションはトランポリンを使って脳を活性化して音楽の文脈を受け入れやすくしている。運動を伴うこととクライエントに寄り添う最高の音楽を提供することが野田式音楽療法の核だと思う。お母さんが子どもを抱っこするとき、自然にリズムをとって揺らしながら歌うではないか。それは誰もがしていること。子どもをあやすことは自分自身をあやすことでもある。子どもが泣き止んで安らかな気持ちになるとお母さんも幸せになれる。人として当たり前のこんな営みの意味深さをもう一度考えてみたいと思う。音楽療法だからといって難しいことを考える前に、ウィニコットの「たった一人の赤ちゃんなんていない。赤ちゃんはいつも誰かの一部なんだ。」という人を関係性の中で捉え、理解しようとするスタンスの意味を今一度考えたい。
■野田燎先生の模擬セッションは音楽とは何かということを考えさせてくれました。あの空間に自分がいたことをとても幸せなことだと思っています。私の人生から欠くことのできないひとときでした。

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