元旦に届いた本

新年早々の大きな地震で防災意識が下がっていたことを痛感。

元旦に届いた2冊の本は、上野千鶴子著『八ヶ岳南麓から』(山と渓谷社 2023)と上野の森美術館の「遠藤彰子展 魂の深淵をひらく」図録(上野の森美術館 2014)です。

上野千鶴子著『八ヶ岳南麓から』は著者が20年前に建てた八ヶ岳南麓の自宅を巡るエッセイですが単に八ヶ岳高原の風光を愛で暮らしの素晴らしさをなぞるようなものではなく上野氏の鮮やかな切り込みが随所にあってすこぶる面白さがあります。「理想と現実」が描かれているように見えて双方が相対する位置にあるのではなくそのどちらをも同じ目線で見て一喜一憂しながら全体として楽しんでいると読んでいます。社会学者の透徹したまなざしはもちろん鮮やかです。「クルマ道楽」に出てくる車には手が出ませんが氏の生き方を象徴しているかのようです。「中古別荘市場」に出てくるポルシェに乗るという夢を果たさずに死んだ男友だちを「やりたいことをやらずに死ぬなんて、ばかなヤツ、とわたしは彼を悼んだ。」という一文は友への最高の弔いであるにちがいないし今の私への応援メッセージと勝手に思い込んでいます。

もう一冊、上野の森美術館の「遠藤彰子展 魂の深淵をひらく」図録は前々から気になっていた遠藤彰子の「画集」です。遠藤彰子の絵は前々から印象に残っていたのですが、新宿書房から出ている「野本三吉ノンフィクション選集」のカバーに使われていて見る度に気になってきていました。私は遠藤彰子の街シリーズというのか、建築物と人、とりわけ子どもが歪む空間に描かれている絵が気になって仕方がないのです。遠近感のようなものはありながら伝統的な遠近法ではなく遠い近いではなく時間の歪みを感じさせる絵で、そこに描かれている子どもの姿もまた一人ひとりが心というか魂を奪われているかのような没頭感があって怖さは一様ではないが目を逸らすことができないのはなぜ?と考えてしまう。その1点1点が100号超というから上野の森美術館の迫力は相当なものだったことと思います。絵と時間について、他のことも気になっていてしばらく追うことになるでしょう。

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