日別アーカイブ: 2020-05-10

立花隆『宇宙からの帰還』

この本は就職して間もない頃文庫本で読みました。すごく面白くて夢中で読んで部分的に何度か読み返しました。この本が退職後また気になってきて今年に入って単行本を買い求めました。1983年初版なので37年も前の本です。なぜこの本が気になってきたかというと、肢体不自由の子どもの教育のポイントをスライドにまとめていて「姿勢」と「抗重力」という言葉をキーワードとして入れるとき、なぜ重力なのかと疑問に思ってのことです。映画「ゼログラビティ―」のシーンも思い浮かびました。『宇宙からの帰還』を読んだ時も無重力の不思議さを考えました。この本だけでなく高橋隆著『磁力と重力の発見』(みすず書房 2003)や大栗博司著『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』(幻冬舎新書 2012)も買い求めました。地球上の何者も何物もが重力なしではこうしてあることはできない。普段は意識しない。でも、普段とは違うことをやろうとするとき、動きをとろうとするとき、重力は曲者となる。体調がよくないときやケガをしたときの動きづらさの黒幕は重力である。同時に助けられてはいるのだがこちらは意識されることはほぼない。さて、肢体不自由やASDの子どもはどうであろうかと考えたとき、重力はあまり味方になってくれているとは思えない。荒唐無稽な考え方かもしれないがそういう発想は彼ら彼女らが経験している世界に思いを馳せるとき何かしらの気づきにつながるように思うのです。抗重力を念頭において姿勢を整える補助を行うことで子どもの表情が変わったり手の操作性が上がるのは経験上認識していることです。『宇宙からの帰還』に登場する宇宙飛行士たちはまさに選ばれた人たちであって障害がある子どもたちとは「ちがう」のですが、宇宙を経験することが宇宙飛行士たちに与えたインパクトは無重力という要因なしではあり得なかったのではないかと仮定するとき、重力とうまく付き合えないようにも見える障害がある子どもたちの経験はどこかしら共通するものがあるように思います。肢体不自由の子どもたちといっしょにいるとき、この子は宇宙を飛んでいるのかもしれないなとその経験構造に思いを馳せてしまいます。