日別アーカイブ: 2020-03-27

本のことなど

昨日は和歌山街道沿いの山間部の道の駅までバイクに乗りました。この先あまり晴天が望めそうにないこともあったのですが来年度の仕事がほぼ固まってきて一段落したこと、そして新型コロナウィルスの感染拡大がこの先見通せないことでやきもきしていたので気分転換をと思ってのことです。果たして、BANDIT 1250SAはいつになく軽快に走ってくれてリフレッシュしました。私の場合、感染予防の3条件を考えると余暇の過ごし方は登山かバイクとなります。考えることは誰もいっしょで学校が臨時休校のときは平日から山はずいぶんにぎわっていました。小学生の孫と健脚のおばあちゃん、楽しそうにお喋りしながら山道を登る女子高生、平日の午後なのに駐車場に入りきれない車が列をつくって路上駐車をするほどでした。先週末に登った鈴鹿の入道ヶ岳の頂上はざっと見て200人くらいの人、人、人で驚きました。

上記の私のやきもきとは、もっとあるはずの情報にアクセスできないことも大きな一因です。テレビやラジオのニュースや報道番組もどこまで事実を伝えているのかと疑いをもって接しています。NHK-BSの海外のテレビ局が制作したニュース番組を見ると国内のマスメディアが伝えるニュアンスとずいぶんちがいます。時間の都合か知らされてないのか。そんなこんなでニュース番組を次から次へと録画すると見る時間がない。そうしたとき新聞はありがたい情報源と思っています。「批判的」な記事はなおさらですがクールに読むようにしています。講読しているのは一紙ですが目に飛び込んでくる記事は多彩です。

一昨日3月25日(水)の朝日新聞夕刊の「read & think 考える」は新型コロナウィルスの「脅威に向き合うために」という見出しで6人の書評家らが関連する本を紹介していました。もちろん感染症を医療から描いた本ではありません。篠田節子『夏の災厄』、澤田瞳子『火定』、皆川博子『疫病船』、小林照幸『検疫官』、川端裕人『エピデミック』、ホーフマンスタール『騎士バッソンピエールの不思議な冒険』(小堀佳一郎訳)です。ノンフィクションは6冊中1冊です。5冊は文学作品です。小説に構成される世界は読者に心を揺さぶるリアリティを突きつける。私はどれも読んだことがありませんがどれもが気になる本です。

ロックダウンが現実味を帯びてきていると伝えられます。WHOがパンデミックを表明する前ですが、NHKの「グレートヒマラヤトレイル 遥かなる天空の道」を観ていてはっとした場面がありました。グレートヒマラヤトレイルの最奥の村タシガオン(2,100m)に着いた撮影隊が村のことをもっと知りたくて長老をたずねたところ、73歳のテンジン・ノルブ・シェルパさんとのやりとりはこのようなものです。「ここで生まれたのですか?」「まだ小さな子どものころに連れてこられました」「下の村で結核がはやってみんな死んでしまったんです」「ある者はこちらの森へ ある者はあちらの森へと放牧に適した場所へと移っていきました」「昔はこのあたり一帯は全部森で家は1軒だけの開墾地でした」 結核から逃れるために下の村を離れたと読めます。下の村では結核のためにみんだ死んでしまったとのこと。そうして病気の感染を断ち切ってきた歴史があるということでしょう。

今日読んだのは小手鞠るい著『空から森が降ってくる』(平凡社 2019)でした。ニューヨーク州ウッドストックの森に終の棲家を見つけた著者は小説を書き、花を愛で、動物たちと過ごし、山に登って暮らしている。2月に訪れた伊那市の小学校の森と森の教室で学ぶ子どもたちを思い出しました。静かで熱い感動を教えてくれる本でした。