ストラド

ストラドとはストラディバリウス作のヴァイオリンの通称です。昨年11月、NHKスペシャル「至高のバイオリン ストラディバリウスの謎」が放送されました。全編にわたってヴァイオリンの演奏が流れる番組でドラマチックな番組でした。ところが、この番組の取材の未公開映像を加え、また、大幅に再編集して今月放送されたETV特集「ストラディヴァリウス~魔性の楽器 300年の物語~」はまるで別物の印象がありました。

比較しての言い方ですが、前者はドラマチックな印象のBGMが全編に流れてセンセーショナルな番組作りを感じますが、後者はBGMも控えめでアカデミックな視点のエピソードが多く組み込まれているように思います。案内役の五明カレンの表情もちがって伝わってくるようです。なぜNHKはこの異なる編集の番組を制作したのだろうか。

後者の番組を見ていて私のヴァイオリンの形はアマティのそれにずいぶん似ていると思いました。表板と裏板の盛り上がりが大きくて幅がやや狭い。それは学生のとき大阪で偶然買い求めた楽器です。「ストラドコピー」ばかりの中、そういえば他に似たヴァイオリンは出会ったことがありません。一度、床に落として裏板を真っ二つに割ったことがあり、修理してもらったら力強い音が出るようになって弓と合わなくなってしまいました。かといって弓を買い換える余裕もなく今に至っています。また弾いてあげたいと、年々よく思うようになりました。

それにしてもこの2つの番組はヴァイオリンの魅力をヴァイオリンとかかわる人たち、演奏家、制作者、また、修理に携わる人たちとの脈々とした営みを追って高い密度で伝えています。ヴァイオリンは今も時代とともに演奏や制作に携わる人たちの熱い思いによって進化し続けていることがよくわかります。ヴァイオリンとともに、音楽とともに日々を重ねることの充実感や喜びにもっと近づきたいと思う。曲を細切れに聴くばかりの毎日はしばらく続く。

朝からの雨はしばらく乾燥続きだった地上にまるで注がれるように降り続きました。自宅前のハナミズキの並木の花は若葉に変わりつつありながらも曇り空をパステル調に彩りを添えていました。肌寒くて1日中セーターを着ていました。

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