日別アーカイブ: 2013-09-07

ショパン バラード第1番ト短調

昨日、アンネローゼ・シュミットのモーツァルト・ピアノ協奏曲全集が届きました。発送元はドイツでしたが包装はかなり雑で輸送中に端が潰れて無惨な状態で届いたもののCDやボックスは無キズでした。演奏は紛れもなくアンネローゼ・シュミットのなつかしいピアノで録音も良好でした。クルト・マズア指揮ドレスデン・フィルもモーツァルトの音楽の構造感を明確に紡ぎ出しています。休日の朝に聴きたい音楽と思っています。

NHKでショパンを特集した番組が続けて放送されました。「ハイビジョン特集 ピアノの詩人ショパンのミステリー」の再放送と「私を救ったショパンのバラード」です。前者は仲道郁代が案内役で、ショパン指定の運指の妙など演奏法も取り上げて観応えのある内容でした。後者はイギリスのテレビ局の制作で、ショパンのバラード第1番ト短調を巡ってイギリスと日本の若者の逆境と再生を描いています。イギリスで、日本で、この曲が注目されていることを曲の構成で説明しようとしている番組作りは素晴らしいと思っています。それほどにこの曲は深いメッセージが込められている、ということです。東北大震災の津波から逃げる人々の映像とショパンのバラードとの組み合わせは初めてで壮絶な印象でした。また、私にはその内容も然ることながら日本の番組では見られない色調やカメラワークも私の目を惹き付けました。リバーサルフィルムのような高いコントラストと深い色調はイギリスの風景はブロンテ姉妹の「ジェーン・エア」や「嵐が丘」に描かれた荒涼としたシーンを想起させるものでした。日本の映像でも共通した印象があるところが不思議でした。そして、何よりも、描かれたふたりの若者の真摯な姿に希望の光を見た思いがありました。コメントを寄せる名立たるピアニストの言葉にもうなずけるものがありました。感情に任せて弾くことが許される数少ない曲です。音楽の力はすごいものだとあらためて思い知りました。