日別アーカイブ: 2005-02-17

美しいいろいろな意味

■昨日、水曜日の朝、降りしきる雨の中、出張でR23を鳥羽に向かって車を走らせていました。宮川にかかる橋で左車線から追い抜きをしたとき、右を走る淡いクリーム色の軽自動車の助手席のチャイルドシートの子どもに私の目は一瞬釘付けになりました。2歳くらいの男の子かな…水滴の着いた2枚のガラス越しなのになぜかはっきり見えました。その子は対面タイプのチャイルドシートに収まって、黒い大きな目はガラス越しに灰色の空を見ていました。ガラスの水滴を見ていたのかも知れません。オー・ヘンリーが書くストーリーに登場するような子どもらしい子どもだと思いました。親の深い愛情を一身に受けている子どもで、ユーモアとウィットと、少しのペーソスが入り交じったストーリーの名脇役といえるかな…。この子は幸せなんだろうな、でも、どうして灰色の空をそんなに見つめているの?と考えてしまいました。そして、子どもたちを守る義務感が私の中にわき上がってくるのを感じました。それにしても絵になり過ぎていました。私はABBAを聴き続けて車を走らせました。出張先の鳥羽の小学校に着いたとき、潮の香りがする横殴りの雨が私の認知感覚をさらに覚醒させてくれました。
■2002年のNHKスペシャル「イギリス授業崩壊からの脱出~シャロン校長の学校改革~」をときどきビデオでみます。先週末の3連休も途中何度かテープを巻き戻しながら3回みました。教育は人だとあらためて強く思います。番組の映像からはリーダーの「詩と真実」を知ることができます。シャロン・ホローズ校長はNHKの取材のとき41歳、校長になって5年目とのことですから36歳で校長として公立カルバートン小学校に赴任したことになります。その5年の間に離婚してシングルマザーとなります。長女は病気が元で97%の視野と視力を失ったとのこと。でも、それがシャロン校長の価値観を変えることになりました。彼女の学校経営の成果はエリザベス女王から爵位を受けるほどの評価を得ます。学校は何を為し得るべきなのか、学校の先生は何を為し得るべきなのか、私は考えます。また、シャロン校長の改革を可能ならしめたイギリスの教育制度とトニー・ブレア首相の教育を重視する政策の意味の深さと重さにも思いを馳せています。三重県教育委員会のスタッフもシャロン・ホローズ校長に学ぶべくイギリスに赴きました。私は「ニューズ・レター」に続くフィード・バックを待ちながら自分でできることから始めているつもりです。
■『自閉症の教育が楽しくなる本』(柴田静寛編纂 無明舎出版 ISBN:4895443299)の佐々木正美さんの「序文・TEACCHから学んだこと-自閉症の人々との共存/バリアフリー」にこんな記述があるとのこと。「最初の訪問の時にショプラー教授が言っていた言葉が忘れられない。『私たちは自閉症の人々に、あなたがたの周囲の世界には、こんなに美しいいろいろな意味があるということを伝えたい』」。「美」は私たちの感性によって「美」と認知されることで「美」となり得るものだ。「美」を「美」として共感する営みこそ私たちの社会を価値あるものとしていくのだと思います。ヒューマニズムそのものだと思います。
■明日の天気は下り坂だとか。また雨かな? 窓ガラスをつたう雨を追って過ごした子どもの頃の記憶をきっと追ってしまう。