日別アーカイブ: 2023-10-17

大正新教育を巡る本たち

門脇厚司『大正新教育が育てた力 「池袋児童の村小学校」と子どもたちの軌跡』(岩波書店 2022)』から芋づる式に知ることになった本が昨日今日と届きました。

■宇佐美承『椎の木学校 児童の村」物語』(新潮社 1983)
池袋児童の村小学校が台の物語ですが登場人物などの解説がコラム風に挿入されていてドキュメントの色彩があります。登場人物の「生」の声は門脇厚司『大正新教育が育てた力 「池袋児童の村小学校」と子どもたちの軌跡』のアンケートとインタビューを参照することでドキュメンタリー番組を観るようです。

■戸塚廉『児童の村と生活学校 ー野に立つ教師五十年 2ー』(双柿舎 1978)
戸塚廉は池袋児童の村小学校の元教員で池袋児童の村小学校を離れることになった後も雑誌『生活学校』を出版し続けて同校を支援したとのことです。当時の社会背景や裏話がふんだんで貴重な資料です。証言であり一次資料と位置づけられるでしょう。

■石戸谷哲夫・門脇厚司編『日本教員社会史研究』(亜紀書房 1981)
門脇厚司は池袋児童の村小学校の創設から終息の経緯をこちらで書いています。『大正新教育が育てた力 「池袋児童の村小学校」と子どもたちの軌跡』とは文脈が異なります。また、この本の執筆者の中に三重県の現役(当時)の教員ふたりが含まれていることに目が留まりました。ひとりは小学校の教諭、もうひとりは今はなき三重県立幼稚園教員養成所の教諭です。現役の教員でこうした研究書の執筆をするのも「先生」のあり様のひとつと思います。

■橋本美保・田中智志『大正新教育の実践 交響する自由へ』(東信堂 2021)
『大正新教育の思想 ―生命の躍動―』(東信堂 2015)と『大正新教育の受容史』(東信堂 2018)とともに三部作で3冊揃いました。大正新教育の「実践」を俯瞰する本と言えます。情報量は膨大です。

■清水満・小松和彦・松本健義『幼児教育知の探究11 表現芸術の世界』(萌林書林 2010)

私がなぜ池袋児童の村小学校に惹かれるのか。門脇厚司『大正新教育が育てた力 「池袋児童の村小学校」と子どもたちの軌跡』で池袋児童の村小学校に在籍した人たちのアンケートとインタビューを読むにつけて先月末に訪問した長野県の小学校で目の当たりにした子どもたちの姿が重なって仕方がないからです。あれは何だったのだろうと、日が経つにつれて子どもたちの姿が鮮明になってきています。そして、大正新教育は今こそ学ぶべき教育の原点がそこにあるのではないかと、そんな予感があります。