日別アーカイブ: 2021-02-18

幾たびかの『静かでにぎやかな学校』

先週、仕事の帰りに寄ったスーパーの書店で1冊の本に目が釘付けになって即買いしました。長嶋愛『手話の学校と難聴のディレクター ― ETV特集「静かで、にぎやかな世界」制作日誌』(ちくま新書 2021)です。

この番組のことは何度かこのブログでふれたことがあります。カメラにまとわりついて言いたい放題手話でおしゃべりする子どもたちの生き生きした姿に冒頭から圧倒された番組です。聴こえないこととか手話とか、この番組のテーマとなっていること以前の、とでもいうのだろうか、当時のNHKのウェブサイトにあったプロデューサーの言葉「初めてこの学校の子どもたちを見たときに、考えさせられたこと。それは、子どもの育ちに必要なことってなんだろう…ということでした。」は番組を観た私がすぐ考えたことでもありました。明晴学園の子どもたちがこんなにも生き生きと「子どもらしい」のはどうしてなのだろうと。まるで魔法にでもかけられたような思いがしました。そのウェブサイトはなくなってしまって読む言葉できずとても残念に思っていました。それから2年余り、この本と出会ったのです。

この本のサブタイトルはこの番組を担当したディレクターが難聴であることを示しています。私は今まで知りませんでした。そうだったのかという思いもありました。そして、この「制作日誌」を一気に読んでしまいました。子細はともかく、難聴の著者がNHKでディレクターとしてこの番組の制作を担当したときの着想や取材、カメラマンやプロデューサー、編集者らとのやりとりの「言葉」に惹きつけられます。彼らを動かしたのは、子どもたちの手話でした。もう痛快ですらある。付箋だらけになってしまいました。この本ははやる気持ちを抑えつつ読んだのでまた落ち着いてじっくり読みたいと思います。