日別アーカイブ: 2018-12-22

映画「アイガー・サンクション」

1975年の映画です。初めて観たのは大学生のときで、入れ替えなしのオールナイト上映で何度も観た記憶があります。今夜、たぶん40年ぶりに観ました。当時、登山の本をたくさん読みました。山岳文学というより山で死んだ登山家の登攀を描いた本です。読めば読むほど自分には縁遠いものと思っていたのですが惹かれるものがあって、登山の雑誌や文部省の登山の「教科書」なども読んでなまかじりの知識だけはありました。当時は大学の山岳部が競うように山に入り、遭難も少なくありませんでした。合唱組曲「山に祈る」(作詞作曲:清水 脩)を知ったのもその頃でした。「昭和34年秋、長野県警察本部では、山での遭難の頻発に業をにやして、 遭難者の遺族たちの手記を集めた「山に祈る」という小冊子を発行して遭難防止を訴えました。ダーク・ダックスは、その巻頭に載った、上智大学山岳部の飯塚陽一君の遭難を、同君の残した日誌と、 同君の母親の手記によって一遍の合唱組曲につくる企画を立て、作詞作曲を清水脩氏に依頼しました。」(引用元)という経緯があるとのことです。この中で歌われる「なぜ山へ登るのか」という問いはいつしか影を潜め、今日の百名山ブームの中ではむしろ「なぜ山に登らないのか」と問いかけられているかのようです。アイガー北壁登攀のためのエギーユ・デュ・ミディでの訓練の映像は厳しくも美しい。「なぜ登るのか」というピュアな問いを思い浮かばせる。

この映画をあらためて観て気づいたことのひとつが装備の進歩でした。衣類はウールからゴアテックスに代表される化学繊維主体の高機能素材となりました。靴も革と合成樹脂や合成繊維のハイブリッドです。下着も化学繊維で汗をかいても肌はさらさらで冷える汗に悩まされることはない。装備の進歩が安全な登山に大きく寄与しています。今日訪れた登山用品の国内メーカー直営店は客足が絶えることがなくレジもしばしば列ができるほどでした。

約30年後の2011年夏、書店に平積みしてあった加藤則芳の「メインの森をめざして-アパラチアン・トレイル3500キロを歩く」(平凡社 2011)と出会っていつかロングトレイルと思って今日に至っています。少しずつ集めた装備も一定揃ってきました。今日は軽アイゼンなどを調達して年末の登山の準備をしています。スタンスはロングトレイルですが装備は万全を期したいということです。