日別アーカイブ: 2018-10-05

校歌

現役最後の勤務校は最後の年度に3校(正確には4校)の統合による整備で新設校としてスタートしました。各校にはそれぞれ何十年と歌われ続けてきた校歌がありましたが校名が新しくなったこともあって新しく校歌を制作することになりました。県立校の校歌の楽譜には谷川俊太郎、作曲小室等らの名前がありますが校歌にお金を回す余力は年々なくなってきています。勤務校も然りでいろいろ策を練ったものの職員で制作することになって曲は私が作ることになりました。

今回制作した校歌の学校の本分校は3校とも入院中の子どもたちが在籍しています。疾患も入院期間も教育ニーズも様々で、そっと寄り添うようなおだやかな曲としたつもりです。「ここに来てまでがんばれと言われたくない」と文集に書いた高校生、「この学校は大嫌い、早く退院したい」と自立活動発表会で作文を読んだ小学生、地元の学校に戻るのが不安な中学生・・・出会ったたくさんの子どもたちの顔が浮かびました。ふと、ある研修会のことを思い出しました。それは、例えば、旋律が上下を繰り返してなかなか終わりそうもない「A Whole New World」は自分の身体が思うようにならない肢体不自由の子どもが親しみを感じるようだという講師の話です。特定の障害や病気に画一的に「合う」音楽があるわけではありませんが、曲のもつ情感が身体感覚とシンクロするという感覚は誰もがあることと思います。出会った子どもたちを思い浮かべながら曲作りでは音の飛躍や劇的な終始感、長調と単調が明確な展開をするような強いコントラストは極力避けました。音楽的に王道を押さえていること、そして、おだやかな中にも少しばかり心が躍るフレーズを入れることとして、3段目の9小節目から付点四分音符の旋律を入れました。この旋律はひとつのモチーフとして考えていましたが曲の構成の中に入れたのは東京駅のカフェにいたときでした。旅先で、歩いたことで曲全体の姿が現れました。

詞は3校の校歌プロジェクトの先生方で制作していただきました。3校の校名にちなむ言葉やそっと背中を押す物語を織り込むなどして仕上げていただきました。今月20日にお披露目です。