デオダート

ずいぶん前のものですがNHKの調査では十代後半に出会った音楽がその人の音楽の趣向を決めることが多いとのことです。そんな十代後半というとFM放送がステレオで聴けて録音できるラジカセを買った高校1年生が私の音楽遍歴の始まりといえます。事実、音楽ばかり聴いていたように覚えています。とにかく聴く音楽がどれも乾いた海綿のように自分の中に入ってきたといってもいい。クラシックと洋楽は手当たり次第に聴いていました。その中でもデオダートはちょっと異質な存在で目の前にアメリカの摩天楼が広がるような感覚に包まれました。先日、当時のそうしたアルバムがCDで出ているのがわかってまとめて4枚調達しました。邦題では、デオダートの「デオダート2」と「ツァラトゥストラはかく語りき」、ヒューバート・ローズの「春の祭典」、そして、ジム・ホールの「アランフェス協奏曲」です。名古屋駅前の地下街にダイヤトーンのショールームがあって「ツァラトゥストラはかく語りき」ばかりリクエストしました。レコードをかけるのはマッシュルームのような髪型の若い女性で、当時、もう30数年も前のことですから正規雇用の社員だったと思いますが、手際よくレコードに針を置くと自分の席に戻って文庫本に目を落としていました。少し薄暗いそのショールームはデオダートの電子音楽がよく合っているようい思い、今もデオダートのを聴くとその光景がよみがえってきます。音の記憶は不思議なものです。大学生の頃、今のようにコンピュータやスマートホンがあったらどんな毎日だったろうと時々考えます。私のことですからまちがいなくそんなガジェットに夢中になっていたことと思います。スマートホンにモーツァルトをいっぱい入れて聴いていたにちがいないし、パソコンもやっぱり自作していたでしょう。その頃といちばんちがうのは、今は音楽を聴く時間が当時の何分の一もないということです。交響曲を通して聴くなどここ何年も数えるくらいしかありません。ほの暗いダイヤトーンのショールームでデオダートに聴き入った頃がただただなつかしい。デオダートも十代後半の出会いです。

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