日別アーカイブ: 2011-02-14

足が先か靴が先か

少し前にちょっと思い切ってトラッドの老舗のプレーントゥを購入しました。底も上革も硬く、頑固な職人が作ったかのようなビジネスシューズです。数年前から柔らかい靴を履くと足の形がくずれるような気がして、足をしっかり保護するタイプのものを選ぶようにしています。ところが試し履きのときちょうどいいと思う靴は足に馴染む頃になるととたんに形くずれをしてしまい、長時間履いていると扁平足になってしまったかのような足の形がくずれるような疲労感が出るようになります。
昨年秋に冬支度のブーツを調達に行った店でサイズ選びに迷っていると店の人がこんなことを言いました。「勤め始めた頃に先輩から教えてもらったんですけど、ブーツは最初血豆ができるくらいきついのを選ぶと2か月くらい経ってすごく足に馴染んできます」と。確かに、ちょうどいいサイズと思って買ったワークブーツはすぐに足が靴の中でごろごろと遊んでいるようになったことがあります。その日は3割引だったのでちょっと冒険をしてきつきつを選びました。もちろん、足先は1cmくらいの余裕があります。そのブーツは履いていると足が締めつけられている感覚があるのですが、脱ぐと足のどこにも痛みがないという不思議な靴で、週末しか履かないのにほどよくフィットしてきました。そして、そのブーツを履いていると足の形崩れの感覚がないことがわかりました。いい靴は足をつくるとでもいうべきでしょうか。今では色違いも欲しいと思っています。
ヨーローッパでブーツタイプの靴を履いていた時代があったように思います。パリの道がゴミにあふれていた頃のこと、靴はブーツタイプが実用的だったのかも知れませんが、編み上げのブーツはヨーロッパの人々の足を形づくってきたようにも思います。幅の狭い甲の高い足と聞きます。年のせいか、サンダルで長時間いると足が形崩れをしてしまいそうな疲労感を覚えるようになってそんなことも考えるようになってきました。でも、きつきつの靴を選ぶのはちょっと勇気が要ることです。
今回も履き始めて数日は失敗したかな、というくらいきつかったのですが、靴の結び方を工夫しているうちにほどよくフィットして、ネクタイで襟元をきゅっと締めるが如く、足元がしっかり身体を支えて自分の居所や姿勢が決まるような感覚がわかるようになってきました。足に靴を合わせて靴を選ぶものの、その靴が足のあるべき形や役割を教えてくれるという、足が先か靴が先かと思い巡らすほどのフィット感があります。造りは質実剛健で、メーカーの修理対応もあって10年はしっかり履けることを思うとコストパフォーマンスも高い。今日、雪の中を歩いたのに足が全く濡れなかったことにも驚きました。
今夜はDuneを聴きながらスコッチを味わう。