「ギルバート・グレイプ」と「鉄道員」

NHK-BS2で映画「ギルバート・ブレイプ」が放送されました。録画したので今夜は所々しか観ていませんが、何度観ても言い様のない感情に駆られます。アメリカンドリームのかけらも見出せない出口がない日々、閉塞感、でも、そこに生きる人たちがいる。些細な出来事に心を揺らせながら生きている人たちがいる。この映画は観ることにかなりのエネルギーを要しますが、ピーター・ヘッジズの原作(高田恵子訳 二見書房 1994)は淡々と読ませます。それだけにもっと生々しいのですが、どこかしら出口も感じさせます。それぞれ独立した「作品」と思わせる原作と映画です。
映画で知的障がいがある弟アーニーを演じるのはレオナルド・ディカプリオです。素晴らしい演技です。ディカプリオは当時19歳、役のアーニーは映画の中で18歳の誕生日を迎える設定です。表情はもちろんですが、指の不器用さと身体のアンバランスがアーニーの生きづらさをストレートに表現しています。映画では主な登場人物の身体の動きが台詞以上に多くを伝えていて学ぶところが多い映画です。「目は口ほどにものをいう」といいますが、身体はそれ以上に饒舌ではないでしょうか。
今夜は日付が替わってからやはりNHK-BS2でイタリア映画「鉄道員」が放送されます。これもまた名作です。私が弱いイタリアの「貧乏物語」です。悲しくて切なくて、でも、目をそらせられない現実の生活があってそこに生きる人たちがいる。ワーキングプアが社会問題になっている今、この映画はまた注目される文脈を含んでいると思います。

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